女の子同士
「ここ、日も当たるし誰も来ないし…私だけの秘密の場所なの。」
「あったかい……」
「…ふふ、気に入ってもらえてよかった。」

柔らかい芝生の上に寝そべって、木陰の隙間から差し込む陽の光を浴びる。
周りからは小鳥の鳴き声とそよ風になびく木の葉の音しか聞こえてこない。
チャイムは随分前になった。
入学早々サボるだなんて、前なら考えられない。

「ねぇ、みこはどうしてこの学校に来たの?」
「………親が早死してね…おじいちゃんに面倒見てもらってたんだけど、それも叶わなくて…」
「うん…」
「でもねその時、おじいちゃんの知り合いの人が私を養子に取るって言ってくれたの。その人はこの学園の校長だったの。」
「ということは……閻魔先生の…?!」
「うん……」
「凄い!不思議な縁もあるのね!」
「そう……かな…」
「じゃあ今は閻魔先生の家から来てるの?」
「ううん、近くにあるマンションから。」
「ふーん………それなら…黒先生と白先生とかにも会ったんじゃない?」
「その……先生と一緒に……」
「えぇっ!な、何かが始まる予感がしてきたわよっ!」

妖刀姫は途端に目を輝かせながら、体を楽しそうに揺らし始めた。
こういう話が好きな女の子なのだろうか…

「それで、それで?」
「え…っと……無常先生と同じ部屋に暮らしてて…ご飯とか作ったりしてる…」
「わぁぁ…!素敵…っ!それに無常先生って呼び方!初めて聞いた!」
「そ、そうなの?」
「だって黒無常、白無常なんだからみんな黒と白を取って区別してるもの!」
「た、たしかに……」
「あれ?でもその前は兄弟だけだったような…先生のご飯は食べたことある?」
「それは…初めの日から一週間だけだけどあるよ。」
「おいしかった?どんなもの出てきた?」
「うーん…パスタとか来た時はまだ寒かったからグラタンとか…どれも美味しかったよ。」
「〜〜〜!」

妖刀姫がとても楽しそうに話を聞いている。
私ばかりじゃ不公平だ。私もちょっと意地悪したい。

「妖刀姫はその…好きな人とかいないの?」
「へ…っ?……い、いないわよ?」
「ほんと?」
「ほ、ほんとよ…?」
「………」
「あ、憧れの先輩ならいるわよ…!」
「おぉっ!どんな人?」
「剣道部の鬼切先輩…その人は妖刀の付喪神?みたいな人なんだけどね。」
「うんうん。」
「私も…その…貴女がさっきされてたみたいことされててね…その時……助けてくれたの。」
「うんうんっ。」
「その時にね、先輩が…『妖刀だから人を傷つける、そんなつまらない考えは捨てろ。この力は守るためにも使えるんだからな。』って…」
「…!」
「だ、だからね…私、貴女を守れて嬉しかった。あの時の先輩の言葉は嘘じゃないって。」
「素敵な先輩と出会えたんだね。」
「う…うん……それから剣道部にも入ったの。鬼切先輩みたいな人になるのが、ずっと目標なの。」

頬を染めながら話す妖刀姫は、まるで恋する乙女。
これは無自覚の恋に落ちているなと思いつつ、応援する。
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