今日も完璧だ
「うむ、今日の手入れも完璧だな。」

鏡台の前で自分の姿を見る。
この煌びやかに輝く白い髪。
手入れの行き届いた手触り抜群の尾。
これだけの美貌を前に乙女が堕ちないわけがない!
仮面をつけて小屋を出る。
ふふ…目に見えるぞ…乙女が小生の胸元にそっと寄りかかる姿が…!
ふふふ…そんなに求めずとも小生はどこにも行かぬぞ…!
乙女よ、待っていてくれ…今向かうからな!

晴明という男は正直気に入らないが、乙女がいるのだから仕方がない。
大きな門を潜って庭園へと向かう。

「乙女よ…今日はどこにいるのだ…?」

ふらふらと歩き探していれば晴明と鉢会ってしまった。

「妖狐か…毎日飽きんな。」
「別に良かろう?それで?乙女はどこだ?」
「キョンシー妹なら今、禰宜さまと出かけているぞ。」
「…禰宜様…?また胡散臭い者が増えたのか。」
「後で紹介しよう、あとお前次第だが式神になってもらおうと思う。」
「ふんっ、今だって貴様の式神になった覚えはないぞ。」

まぁ良い、出かけているのなら適当に待っていれば来るな。
小動物の集まる小屋に足を運ぶ。
小動物たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。

「ふっ、そんなに匂いをつけるな…」
「、、、」
「お、誰か来たの………」
「……」

一番嫌な男、夜叉が先客だった。
背を向けて戻る一歩を踏み出す。

「テメッッッ待てェッ!!!!!!今の見てただろ!!!!」
「あぁ、実に気色が悪かった。」
「ア"ァァンッ??!!!」
「それにお前は犬が好きだったのだな、はぁ止しておこう。」
「悪かったなァッ?!尾を振りながら忠実を見せる僕の姿は、悪くないからな!」
「ほぉう、なるほど。気に入らないが小生も似た感情を持っている。」
「へ、へぇ…もっと頭の悪い理由かと思ってたが。」
「ぐっ…、、、…ふん、今はお前と喧嘩をしにきた訳では無いからな。お互い干渉しない約束をしよう。」
「あ?…あぁ…俺様はあっちに行く。」

それにこの美しさはなるべく崩したくはない。
足元に近寄り匂いを確認する犬たちをぼんやりと眺める。
膝に乗ってきた一匹をゆっくりと撫でながら思いにふける。
禰宜か…
そう思えば前に来たのはいつだったか?
通っていない間に引き取ったのだろうな。
反対側に座るアイツは会ったことがあるのだろうか。
壁越しに話しかけてみる。
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