気に食わない
優しくも芯のある声に聞き惚れながら、巫女の乙女と契約を結ぶ。
あぁ、小生は幸せ者だ…
乙女と巫女の乙女と小生、三人の愛の巣を作ろうではないか…!

「あ、みこいたいた…これ、頼まれてたやつ。足りるか?」
「わっ黒無常…ありがとう!うん、これだけあれば十分だよ。」
「ん…」
「あのね、さっきお狐さんも私と契約を結んだの。」
「へぇ…」

何やら随分と親しげに話すな…
どういう事だ?

「どうせ…女たらしクソ狐だからそういうとこだろ。」
「口を慎め貴様っ!さ、巫女の乙女よ、その荷物を置いて茶屋へ行こう。」
「はいっ。」
「おいっ待て!茶屋ってどういうことだ?」
「え…?」

頼んでいた荷物を置きに行こうとすると、腕を掴まれた。
…何だか不機嫌…?

「小生と乙女と巫女の乙女とで茶を飲みに行こうと誘ったところだ。」
「はぁ?行くな行くな。今度連れてってやるから、な?」
「…?でももう少しお話したいし…」
「話ならここでもできるだろっ。こいつと茶飲みに行くなんて許さねぇからな。」
「な、なんで…?黒無常のけち!」
「なっ…あのな?茶飲みに行くってどういう事か分かってるか?」

しゃがんで両腕を掴み、幼子に言い聞かせるように聞いてくる。
何だか今日の黒無常は意固地だな…

「ちょっと遊びに行くだけじゃないの?お話して仲良くなろうと思ってるのだけど…」
「はぁ…あのなぁ…その仲良くなるって友達じゃないぞ?」
「…?」
「…ったく、どこまで鈍感なんだ……っ」
「ご、ごめんね…私あんまりお友達もいなかったから…」
「そう…だったな……」

友達になりたい人とはお互いのことをよく知る。
そのためにお茶を飲んで、気を緩ませながらお話するものだと思っていた。

「あのな、男がお茶でも飲みに行こうって言うのは…」
「うん。」
「いい女だな、俺と付き合わないか?って言ってるのと一緒なんだよ。」
「………へ…?」
「黒無常っ!その言い方ではまるで小生に疚しい気持ちがあるようではないかっ。」
「実際そうだろ!お前が二つ返事するなんて…いくら女相手でもありえねぇからな。」
「はぁ?貴様には関係なかろう!」
「いーや、関係ある。まぁその気があろうとなかろうと言っておくが…」

ぐっと彼女の肩を抱き寄せ、得意気な顔をして…

「こいつは俺と白無常のものだから。」
「…っっ…??!!!く、黒無常…!」
「いてっ、照れんなよ…可愛いな…」
「なっ…!」

今確かにこいつは彼女の額に口付けを落とした!
そして彼女は……顔を真っ赤にしている…
よりにもよってこの喧嘩腰の強い男とだと?!
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