勝敗歴然
まさかお狐さんがそんな風に思っていたなんて思わなかった…
でもお狐さんも怒ってるし、本当はただお友達になろうとしてるかもしれない…

「巫女の乙女よ!こんな野蛮な真っ黒助より小生の方が断然良いぞっ。」
「…!」
「まだ弟の白い方なら分かるが…後ろにいる悪鬼と同じ位にはやめておいた方がいい!」
「アんだとォッ?!」
「あ、おのお狐さん…」
「小生では駄目か?小生ならば望むものを何でも叶えてやれるぞ?どうだ?」
「あ、あの…いくら何でも黒無常や夜叉くんを馬鹿にするような言い方は許せません!」
「…!!」
「優しい方だと思ってたのにっ!人のことを見下す人は大嫌いですっ!」

そっと握った両手を勢いよく振り落とされた。
そして大嫌いという言葉…

「あーあ、お前馬鹿だなー…俺は別に気にしねぇけど、みこは怒るに決まってんだろ…」
「ざまぁ見やがれ!調子乗っからだよ。」
「だい……きらい………だ…い……」


「ねぇねぇ…巫女のお姉ちゃん…怒らないで…?」
「キョンちゃん…優しいね…」
「ううん、お姉ちゃんの方がとっても優しいよ。だって他の人のために怒ってるんだもん。」
「…あのね……お狐さんがね…あんな言い方するのに怒ってもいるし、悲しいの。」
「泣かないで、お姉ちゃん…おじさんもきっとお姉ちゃんの事が好きだから必死だったんだよ!」
「でも…あんな言い方はないよ…っ」
「うぅ………あ…」

しゃがんで蹲る私の頭に大きな手がぽんっと乗せられる。
顔を上げれば黒無常の姿。

「泣くな…妖狐はまぁ口は悪いが、根はいい奴だからさ。許してやってくれないか?」
「………」
「うんうん、おじさんの気刃はすごいんだよーっ!何でもバシュン!バシュン!って切っちゃうの!」
「そうだな。それにあんたの式神になるんだろ?仲良くしないとな?」
「黒無常は馬鹿にされて何とも思わないの?」
「え?んー…まぁ野蛮なのは否定しきれないかな…俺も鬼だし。」
「………」
「あいつは悔しさでちょっと興奮してただけだって。ほら、戻ろうぜ?」

手を握って立ち上がれば、私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。
こうやって傍に寄り添ってくれる黒無常の事がまた更に好きになる。
そろそろと戻れば、ずーんと落ち込んでいるお狐さんの姿が。

「お狐さん…あ、あの……」
「すまない…禰宜様の立場から考えれば、怒るのも当然だ。」
「ううん、私もきつい言い方してしまってごめんなさい…」
「へ……」
「私の式神としてこれから仲良くしてください…だからもうあんな言い方しないって約束してくれませんか…?」
「あ、あぁ…もちろんだ…!これからは気をつけよう…乙女を泣かせたくはない…」

小指を絡ませ約束を交わす姿に一安心した。
女癖が悪い奴だが、まぁうまくやっていけるだろう…
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