赤い糸
参道を沿って社をじっくりと見る。
「ふぅー、いやぁ、さっきは助かったぞ!」
「へっ?!だ、だだ誰ですか?!」
「うむ、すまん!さっきの黒猫じゃ!」
「……へ…?」
「お主、みこじゃろ?隣に一目連も連れて…でも式神のようじゃな。」
「あ、あの!何で私の名前を…」
「…!……本当に人間になったのだな…」
「…?」
「いや!何でもない!して、お主、何であんな所にいたんじゃ?」
「それは……その………」
「うむ?まぁ言いたくないのならば、別に良いんじゃが!」
「えと、その…あなたは?」
「おぉー!こりゃすまん!わしは縁結神じゃ!そして、ここは我の社じゃ!」
「縁結神が自らここに招いた…ってことで良いですか?」
「うむ!そうなるな!お主はたくさんの糸に結ばれているのが見えてな!」
「………」
「特に二本の太い糸がお主の体中を縛りつけておる!これは、旦那の物か?」
「た、多分…そうです…」
「ふむふむ、でも片方は少し緩んでおるな、何かあったのじゃろ?」
「………」
とても明るく気さくに話す縁結神。
見た目は少女だが、神力と妖力を感じる。
悪い人では決してなさそうだ。
「良ければ話を聞かせてくれい!縁にでも座って、のう?」
「…あの…実は………」
柵のない縁に腰かけて、先程の経緯を話す。
力の感じからして、信用しても大丈夫…だよね?
「ふむ…辛いことがあったのじゃな…だが、それは新しい出会いでもあったと…」
「はい…だから、素直に喜べなくて…」
「そうじゃな…確かに死をきっかけに出会う運命にはなっておる。」
「………」
「じゃがのう、お主の宮司は怒らんと思うぞ?きっとその宮司は外の世界を見せてやりたかったのだろうと思う。」
「外の世界…?」
「あぁ、先程『陰陽術は全て安倍晴明から伝授した』と言ったな?」
「はい…宮司様は最低限の神事しか教えてくれなかったので…」
「うむ、きっと縛り付けたくはなかったのだろう。普通の村人として生きていけるように。」
「………」
「つまりは後継人を残す意思がなかったということじゃ!だからのう、悲しい始まりではあったが、宮司にとっては喜ばしいことなのじゃ。」
「私が…神社から離れられるから、ですか?」
「その通りじゃ、そしてお主は新しい世界を見ている。宮司もきっと喜んでおるぞ!」
縁結神が言うことは、あまり納得できないけれど、確かに救われる言葉ではあった。
もし、本当にそうであるのならば、この出会いの喜びを分かちあってもいいのかな…
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