最期に覚えているのは…笑みを浮かべながら私を抱きしめる二人の温もり…
どうしてそうなったんだっけ…
目が覚めれば私は閻魔様の膝で寝ていた。
そして優しく頭を撫でる手の感触を感じた。
閻魔様は一言すまぬ、と言っていた気がする…
どうして閻魔様は謝ったんだろう…
判官さんも童子ちゃん達も誰も嬉しそうじゃなかったな…
早くに来すぎたからかな…もう少し人として生きていれば歓迎されたかな……

「ふふ……どんな風に妖怪になったのか覚えてないですね…気がついたらなっていたので…」
「ふむ…そうか……では、冥界に行く時はどんな手段を使ったんだ?」
「死ぬ前のお話ですか…」
「晴明、まだ寝ぼけてるみたいだぞ。」
「二人とお話してた…のかな…」

いつもの様に私の部屋に来た二人を出迎えて、お花見をしようと団子を用意してたんだっけ…
あ…そっか……私……
私…………

「禰宜様…?どうした?」
「みこ…?何で泣いてるんだ?大丈夫か?」
「へ………?」

悪い予感がますます現実味を帯び始めた。
禰宜様から話を聞けたなら一番良いのだが…

「よろしければ私がお話しましょうか。」
「……あぁ、頼む。」
「ふふ…晴明殿ならもうお気づきかもしれませんが…」
「………」
「みこを殺したのは私たちです…なるべく傷つけたくも苦しめたくもなかったので、毒を少しずつ投与しましたよ。」
「あぁ、おかげで眠るように…って感じだったよな。」
「えぇ…美しかったですよね…」

彼らの本性を見くびっていたのかもしれない。
思い出に浸り、恍惚とした表情は狂気そのものだった。

「それはいい考えだ。さて、それはみこが殺してくれと言ったのか?」
「…?」
「彼女は妖怪になりたいから死にたいと言ったのか?」
「……ふふ、何を仰っているのですか?」

笑顔で答える白無常。
惚けたように首を傾げる姿に私の予感が当たった事を確信した。

「みこが望む以外にどうして殺す理由があるのですか?」
「私もそう思いたいのだがな。もしかしたらお前達が手を出したのではないかと思ってな。」
「ほう…?つまり、私達が自分勝手に殺したと仰るのですね。」
「まぁそうだな…それで、どうなのだ?私はただ事実を受け止めるだけだ。」
「ふふ……みこと確実に共にできる方法を選んだだけですよ…」

狂っている…
元からこの二人はそんな思考をするような鬼だっただろうか?
白無常は何とも言えないが、少なくとも黒無常はそこにある幸せを守るような男だと思っていたが…

「俺も白無常もみこも…三人でずーっと暮らそうって気持ちは一緒だったからな…」
「えぇ、それに…今の姿のまま妖怪になるのですから、ずっと可愛らしい姿を愛でることができる…」
「晴明、これはいけないことか?みこも妖怪になって俺達と共にあることは望んでたぜ。」
「その望みは今の望みだったのか?」
「んー?今とか今じゃないとか、関係あるのか?」

彼らと話していてもまともな思考をしていない。
彼女は確実に彼らに誘われている。
そして、その心さえも以前の彼女のままとは断言しにくくなった。
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