一言断り、一旦部屋を出る。
冷や汗ばかりが流れる。

「セイメイさま、大丈夫ですか?随分と顔色が悪いですよ。」
「小白か……少し、相談にのってくれないか。」

部屋から少し離れた場所で、先程の話と予見を伝える。
すると、顔は青ざめ小刻みに震え始めた。

「狂ってますね…あの鬼使い兄弟がそんな恐ろしい鬼とは思いませんでした!」
「あぁ、本当に。私一人ではどうにもこの事実を受け止めきれない…」
「……い、嫌ですよ!小白ももう無理です!」
「いや…良いんだ…」
「……あぁ、八百比丘尼さまを呼んできましょう!あの方なら人生経験も豊富ですし!」
「そうだな…禰宜様に対しても話が聞きやすそうだ。」

八百比丘尼を呼びに行った小白に少し気が軽くなった。
彼女の心が壊れていなければ、真実を聞き出せるはずだ。
さすがにそんなことはしないと思うが…
あの状態を見る限り、弱りきっているに違いない。
一歩間違えれば私達をきっかけに心を壊してしまうかもしれない…


「晴明さん……まさか、このような事になるとは…」
「八百比丘尼はどう思う?」
「晴明さんの予見に外れはないと思うのですが…信じたくはありませんね…」
「そうか…取り敢えず禰宜様をあの二人から離して、聞いてみてくれないか?」
「分かりました、お手伝いいたしましょう。」

八百比丘尼と再び恐ろしく冷えきった部屋へと戻る。

「お、八百比丘尼じゃねぇか。」
「…八百…比丘尼さん…?」
「そうですよ、禰宜さま…私とお話しませんか?」
「お話…?」
「えぇ、お二人と結ばれるのですから、女同士で話し合う事もありますし…」
「…、…はい…」
「では、外に出ましょうか…女の子同士の秘密、ですから。」

さすが八百比丘尼だ。
何の不自然さもなく、禰宜様を兄弟から引き剥がした。
少し不機嫌そうな顔をするが、納得はしたようで無事に部屋から出た。
さて……私はこの二人から聞けることは聞かないとな…

「晴明殿、妖怪になった彼女を見た時、どう思いましたか?」
「そうだな……まずは驚いたな。」
「なるほど。」
「あまりにも嫁入りが早いと思って、驚くことしかできなかったな。」
「なぁ…みこ綺麗だと思わないか?」
「あぁ、確かに黒と白を基調とした華やかな装束に赤の帯はとても映えていたな。」
「あれはきっと閻魔さまの趣味だな。」

あぁ、この地獄のような時間。
八百比丘尼よ、頼む。
真実を掴んでくれ。
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