「普段のように僕を優先したらどうですか？」
「いーや、これだけは譲れないね。」
「………」

先程から二人に挟まれながら、頭上で口論を聞かされている。
私、このまま寝てもいいかな…
せっかくお布団に入って寝ようとしてたのに…
いきなり侵入した上に取り合いなんてされても困る…

「みこ？僕の腕の中がいいですよね…？この男と寝るとたまに苦しくなるらしいですし。」
「な、なぁ？みこ、寝る時位は俺と抱き合おうぜ…？」
「………間を取って、どちらにも向かない。」
「みこ〜っ！もっと温もって寝ようぜ…？な？」
「みこ、こちらにおいで…優しく包んであげましょう…」

確かに？
黒無常に抱きしめられながら寝ると、とても安心するし、凄く愛されているのを感じる。
でも時折、その愛おしさが違う方向へ走りがちになる。
言葉責めして、その気にさせるなんて強引なんだから！
白無常にされると、とても優しい匂いがして落ち着くし、たくさん口付けをしてくれる。
でもそれが調子付いて体をまさぐられて流されることもしばしば…
寝かしつけているのに、寝かしてくれないなんて酷い！
結論、どちらを選んでもどちらかが焼きもちを妬くし…
落ち着いて寝れないのが目に見えている。

「私はこのまま寝るよ、おやすみなさい…」
「なっ…？！」
「………僕は諦めません。」
「あっおい、こら！ずるいぞ！」
「往生際が悪いですね…っ。」
「いたたた"た"っ"！痛い！痛いよ！！」

ぱっと手を離す二人。
どうしても抱きしめたいらしい。

「じゃあ…二人共に抱きしめられたいなぁ…」
「どっちが前だ？後ろだ？これも大事なんだぞ！」
「もちろん、僕の方を向くんですよね？」
「俺に決まってるだろ？」
「…………」

良い解決策だと思ったのに、全然良くならなかった！
どっちが前でも後ろでも不安しかないよ！
…ん？いつもどう寝てたっけ…？
黒無常とだと…後ろから抱きしめられて？
白無常は向かい合ってるんだっけ？
じゃあ……
黒無常と向かい合えば、普段とは違うから何もされなかったり…？

「決めた…こっち…」
「…！みこ…♡」
「…、…なるほど…分かりましたよ、癖を逆手に取りましたね？」
「うん…いつもと逆の方向でしょ？」
「確かに…な、みこ上向いて…」
「残念ながら意味はないですよ？あぁ、あのまま天井を見て寝ていればよかったものを…♡」

黒無常に口づけされている間に、白無常の手が体をなぞる。
体を横に向けた時点で同意だなんて、本当に酷すぎる！
どちらを取ってもだめだなんて…
やっぱり三人で寝る時は安眠を諦めるしかない…？

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