三.風呂戻りのほかほか姿
「おかえりなさい。」
「………白無常、いつの間に…」

湯から上がり、部屋に戻ると白無常が敷いていた布団の上で待機していた。
笑みと共に出迎えられる。
両腕を広げた胸元に擦り寄れば、ぎゅっと抱きしめられる。

「湯浴みしたところなんですね…」
「うん、ぽかぽかしてるの…」
「もう少し早くに来ていたならば…」
「だ、だめだよ?一緒には入らないんだから…」
「おや……それは残念ですね…」

前に黒無常と入った時は(半ば強引だったけど)、散々な目にあった。
きっと白無常にもいろんな意地悪をされるに違いない!

「ほら、後ろを向いて?乾かしてあげましょう。」
「えへへ、ありがとう。」

後ろを向けば優しく髪を拭いてくれる。
意外と疲れるこの作業をしてもらえるのは、とてもありがたい。
わしゃわしゃと撫でられる感覚に少し眠たくなってくる。

「いい匂いですね……花の香りがします…」
「八百比丘尼さんはこの香りがお好きみたい…」
「なるほど、八百比丘尼殿の好みでしたか…みこも好きな匂いはありますか?」
「えっ…うーん…」

無常を抱きしめた時のあの匂いが好きだなんて、言うのは恥ずかしい…
ここは無難に…

「お、お日様の匂いとか…かな。」
「おや、そうでしたか。みこのことですから、僕達の匂いかと思いましたが。」
「うぅ…分かってるなら聞かないでよ…」
「すみません♡…ほら、乾きましたよ。」
「ありがと…」

からかわれたことが気に入らなくて、そのままそっぽを向く。

「ふふ、拗ねてるんですか?」
「だって…」
「すみませんって…僕もみこの甘い匂いが好きですよ。」
「…甘い匂い?」
「えぇ、僕達を誘惑するあの甘い匂い…」
「…………っ!な、なんでその匂いが好きなの…!?」
「あの匂いに誘われると血がたむぐっ」
「もっと普通の匂いにして!恥ずかしいっ。」
「…、……蜜のような味も好きですよ。」
「お、鬼!もう白無常なんか知らない!」
「おやおや、顔が真っ赤ですね。ふふふ…可愛いですね、そんなに照れずとも良いんですよ。」
「白無常はもうちょっと遠慮して!」

まさか、まさか!
好きな匂いで、交合いの時の話を出されるとは思わなかった!
お世辞でもやめてほしい!

「みこ、今度は一緒に湯に浸かりましょうね?」
「……」
「背中、流してくれますか?僕もみこの体、洗いますよ。」
「け、結構です!」
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