八:返事の来ない手紙
おかしい。
この前会った時は、忙しいからひと月は帰れそうにないと言っていた。
だから手紙を書くね、と伝えたはずなのに。
一週間前に送った手紙の返事が来ない。
二人に対して書いたし、絶対黒無常か白無常に届くはずなのに…
もしかして冥府で何かあった…?
そんな風にだんだん不安になってきて、仕事をするなかでも集中出来ずにいる。
私の挙動不審さに皆は心配して、何かあったのかと聞いてくる。
私は無常に何かあったのかを聞きたい。
晴明様に少し話をすれば、もう一週間待ってみたらどうかと言われた。
落ち着かないけれど、まだ一週間だもんね…


「………来ない…」
「……あの黒白は何してるんだか。」

もう上弦の三日月から、満月がかけ始める程も待ったのに返事が来ない。
本当に何かあったんじゃ…

「……、……っ…」
「…………泣いてるの…?大丈夫よ、大丈夫。」

静かに泣き始める姿を慰めることしかできない。


「はぁ……はぁ……困りました……こんなにかかるとは…」

最後の仕事を早く終わらせるために走る。
手紙が届いたというのに、読む前に破れて泥まみれにされてしまった。
もちろんその亡霊にはこれでもかと制裁を下したが…
それからは早く会いに行くためにもと、強引に冥界送りをしてきた。
目当ての鬼を見つければ、あちらも気づいたようで、唸り声をあげる。
構ってる暇はない!
冥旗で殴ってやれば、虫の息になったのを引きずって閻魔殿へと向かった。


今日も来なかった。
妖刀ちゃんも随分困らせてしまった。
だんだん返事の来ない不安から会えない寂しさに変わり、積もっていく。
布団の中に潜り、ぎゅっと枕を抱きしめて眠ろうとした…
ばんっ!

「はぁ…っ…はー……はっ…」
「……!!!白無常…ぅぅ…!」
「はぁ…ふーー…………すみません、遅くなりました。」

息をきらしながらも現れた、会いたくて焦がれていた人。
感極まって泣きそうになるのを我慢しながら、抱きつく。

「白無常…っ…会いたかった…!!」
「すみません…手紙、せっかくくれたのに…読む前に失くしてしまいました…」
「ううん、いいの…!会えたから!」
「凄く不安だったでしょう…?僕も、会いたかったです…」

抱きしめ返してくれる温かさに涙が溢れる。
どうりでお返事が返ってこないわけだ…
でもきっと急いで帰ってきてくれたんだ。

「白無常…ありがとう…お仕事、大変だろうに…」
「…泣かないで……貴女に会えない方がよっぽど堪えますよ…」
「……、……」
「しばらくは一緒にいれますから…ね、笑ってください。」
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