十:ほら、買ってきたぞ
お土産に、と両手いっぱいに乗せられた風呂敷。
特に何かを買ってきてと、頼んだ覚えはない。
だけど、この大きさでこの重さは、新しい着物に違いない。
黒無常の好みの着物かぁ…やっぱり黒を基調としたもので、蝶結りぼんむすび要素があるんだろうなぁ。
期待感を持って風呂敷から着物を取り上げる。

「ほら、昨夜何でも好きなもの着るって言っただろ?」
「そ、そんなこと言った覚えはないけど…」

正直、昨日はいじめられて泣かされた記憶しかない。
もしかしたら何かの条件で、約束してしまったのかも…
にしても、無理やり言わせていることに変わりはない。

「黒無常って……こういうの好きなんだ…」
「背中に大きく俺の好きな蝶結りぼんむすびがついてて良いだろ?」
「ついてるって言うか…ここしか結ぶところないじゃん…」

ちょうど腰あたりで本止め用の蝶結びする以外は一枚の布切れ。
背中側はこの蝶結び以外に布で隠れる部分がない。
こんなの下着丸見え…!
確実に夜に着させることしか考えていない着物で、恥ずかしさに体が震える。

「もちろん、着てくれるよな♡」
「………せっかく買ったものだもんね…でも一回だけだよ?」
「よっしゃあ!ふふん…どうやって抱こうかな……」

渡すだけ渡して満足したのか、また鎌を手にして仕事へと戻って行った。
うーん……
今着てるものの上から着るのもありかもしれない。
胸元も谷間が見える位置だし……
というか、これはもしかして肩出し…?
姿見の前に立って合わせてみれば、明るい色なのもあっていい感じだった。
良かった、遊びに行く時にも着て行けそうだ。
それにしても黒無常は本当に蝶結びが好きなんだなぁ。
確かに可愛くて私も好きだけど…
もしかして黒無常って案外形の可愛いものが好きなのかな?
もふもふした玉も付けてるし。
それに案外お茶目なんだよね!
よく白無常や私にお兄ちゃん顔するけれど、子供っぽいところもあるし。
ふふ…可愛らしいところがいっぱいあるな。
こういうところ知ってるのも私だけ…なのかな…?
何だか、嬉しい。

「お、気に入ってくれたのか?」
「あれ?お仕事に戻ったんじゃなかったの?」
「んー?もう休暇に入ってるぞ?だから土産を持ってきたんじゃないか。」
「そっか、お疲れ様。」
「おう。それでさ、どうしてやろうかなって考えたんだが…」
「……」
「目隠し拘束焦らしプレイでもしようかなって!汚さないためにも見て楽しまないとな♡」
「………はぁ…」
(可愛らしいって思ったのはやっぱりなし…)
10/20
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