十四:先に寝ててください
「……え…なんで…?急にどうしたの…?」
「すみません…すぐ、戻ってきますから。」

寂しそうに見上げる姿に心が痛む。
しかし、どうにもうるさく呻く亡霊が、近くにいるのは無視できない。
頭をそっと撫でて落ち着かせる。
袖を掴む指が離れたのを見て、外へと出る。
さて……これからの楽しみを邪魔する愚か者はどこのどいつでしょう?
鬼使いが、ただの優しい案内人だと思ったら大間違いですよ…
我々は地獄の果てまで追いつめる事が出来るんですよ…
ふふ…どうしてやりましょうか!


「………」

いつものように脱がしかけられた時に、面倒くさそうにため息をついた。
そして、特に何も言わずにそっと着物を戻して、外へと行こうとした。
訳が分からなくて咄嗟に引き止めたけど…
中途半端に気持ちが高まったまま、白無常が出ていった襖を見る。
……きっと、亡霊の声が聞こえたのかも。
まだ温もりや触られた感触が残っている体を横たわらせる。
こんなこと珍しいわけじゃないけれど…
仕事に戻る時の…あの切なく見つめる瞳を見ると、こちらまでさらに寂しくなってしまう。
一人では大きな布団を頭まで被り、体を丸めて目を閉じる。
………
……

……
………
眠れない!
一緒に寝れると思ったのにいなくなったら寂しいよ…

「はぁ…ふー………すみません………もう、寝てしまいましたかね…」
「………白無常…」
「…!ただいま戻りました…本当にすみません…」
「白無常は悪くないよ!…悪いのは亡霊なんだから!」
「……そうですね…」

気を取り直して冷えてしまった体を布団の中に入れる。
丸まった体を抱きしめて、匂いを吸い込む。

「…………」ドキドキ
「……」
「……………」ドキ…ドキ…
「……」
「………し、ない、の…?」
「……え…?して、ほしいんですか?」
「だ…だって……」

恐らく先程までそういう雰囲気だったのに、やめられてもどかしいのだろう。
顔を赤くさせながら、遠慮がちに甘える姿に胸が高鳴る。
みこはやはり、圧倒的に僕に甘える方が多い気がする。
男だと、獣だと、分かっていないのだろうか…
それとも、僕であれば何をされようと構わないということなのか…
どちらにせよ、体を擦り寄せる姿や匂いに誘われていく。

「じゃあ…気を取り直して…続き、しますか?」
「…して…ほしいな…?」
「ふふ……では、寂しくさせた分もっと愛しますね…♡」
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