十六:仕事の手伝い
「……今日も何だか忙しそうだな…」
「……ですね…昨夜も疲れで早々と寝てましたし…」

長机の上にどっさりと置かれた巻物や飾り物たち。
それに囲まれて何やら写経をしている様子のみこ。

「あれってみこが書いたら何か違うのか?」
「確か…神力が宿るため、奉納時の読み上げに用いると良い影響を与えるだとか…」
「へー……じゃあ、あれは台本ってところか。」
「あとは、神社へ参って朱印の用意も手伝うらしいですよ。」
「あー、それに役がいないところでは神楽舞もなんだろ?……大変だな。」

じっと集中して書く姿を見て、周りの障壁を見比べると…
構われない事などを気に食わないどころか、応援したくなる程だ。
俺たちに出来ることは何かないものか…

「……たまには僕達が献身するのも良いですね…本来はそうであるべきなのでしょうが…」
「俺も同じ考えだ……しかし…何をすれば?」
「……………うー……ッッ!……はぁ……あぁぁ無常ぉぉ…疲れたぁぁ…」
「何か手伝えることはねぇのか?」
「え…手伝ってくれるの…!?」
「あまりにも大変そうで…少しは旦那としても、ね。」
「嬉しい…!!んーと、そうだなぁ…周りを整理してほしい!終わったものもあるから…」
「うっし、任せろ!」

掃除をするという、至って普通な式神としての仕事を与えられる。
一息つくついでに指示を仰ぎ、その間温かい茶を飲ませる。
主人とその式神。
その関係性がまともに働き、あっという間に乱雑した部屋が片付いていく。

「ありがとう〜!これで大分やりやすくなった!」
「おうよ、これ位なんてことねぇ!」
「他にはありませんか?何でもしますよ。」
「何でもかぁ……じゃあ今日、買い出しの当番だったの…代わりを頼んでも?」
「分かりました。」
「ぐ…っ……さ、作業頑張れよ…」

明らかに雑用係にされた事は、気に入らないが…
まぁこれで少しでも負担が減るなら、構わない。
それに一緒に行ったって荷物持ちになってるしな…
相手されないのは寂しいし、少しもどかしくも思う。
が、いくら何でもあんな量をこなそうとしているのを見れば、誰だって邪魔は出来ねぇ…
初めて見る仕事量の多さにはたまげたが…
それだけ慕われているんだろうな、それは良い事だ。
さてさて…今の仕事が終わったら、嫌って程構ってもらうからな!
そんな話を弟としていれば、同じ思いだったようだ。
ますます楽しみになってきた…
本業を全うするみこは偉いが、一番の優先は俺達に尽くすってこと…
忘れんなよ!
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