十七:深夜の帰宅
「明日の夜は部屋に行きますね。」
「本当…!?待ってるね…!」

日中会える時も毎回喜んでくれるが、夜を一緒に眠れる時はより一層喜ぶ。
僕から見れば、抱かれるのを期待しているのではないか…
と、欲望丸出しの考えがまず出てくるが…以前聞いた時は、『安心して眠れるから』と言っていた。
恐らく、まだ宮司が襲われた日の恐怖を忘れられずにいるのだろう。
晴明殿の一室に住んで、夜中でも活動している妖怪はいると言うのに…
それでも見えるところや触れられるところに誰かがいないと、怖いのだろう。
その心情に寄り添うことも一種の使命だ…


「………はぁ…」

またやってしまった…
約束した時に限って、それを狙ったかのように亡霊共が騒ぎだす。
冥界送りを半ば強引に行い、帳簿分が終わった頃には現世はもう真夜中。
静かに部屋へと向かって襖を開ければ、案の定寝てしまっているみこ…
起こさないように布団の傍に座る。
どれ位の時間待っていてくれたのだろうか…
鬼使いの仕事を苦と思ったことも、辞めてやろうとも思ったこともないが…
こうして、約束を守れてやれなかった時は辛く感じる。
それでも理解している彼女は、拗ねはしても怒りはしない…
寂しい思いをさせているのは十分に分かっているのに、それを出さないところにますます申し訳なく思う。
不安そうに眉を下げている。
悪夢でも見ているのだろうか。
それに…真ん中で寝ればいいものを…
僕が入れるように空けてある左側を見て、布団の中に入った。
そっと体を動かして包むように抱きしめる。
体制が変わったからか、もぞもぞと身動ぎをする。
まるで僕を抱きしめ返すように…体を擦り寄せて、落ち着く場所を見つける。
そうすれば表情も和らぎ、あどけない寝顔を見せる。
寝ていたとしても何かを感じているのだろうか…?
それともこの温もりのおかげで夢の中に、僕か黒無常でも現れるのだろうか…
愛おしさが混み上がり、愛したい気持ちがわいてくる。
……起こしたくはない…
でも、何もしないままは我慢できない……
身体中に痕を残していく。
朝起きれば、喜んでくれるだろうか…
それともまた拗ねてしまうかな…
触れることに満足すれば、朝を迎えるために眠りについた。


外が明るくなるのを感じた。
目を開けて、起きるまで髪を弄ったりして待つ。
何刻待ったかは分からない。

「……、…」
「…おはようございます…」
「……しろむじょぅ…?…おはよう。」

まだ眠そうにしながらも表情を崩す。
あぁ、可愛い…
昨夜はすみませんでした…遅れないよう精進しますから…
言葉に出すのはやめて、表現して伝えれば…
慰めるように抱き締め返された。
この温もりにまた溺れていく感覚に沈んでいった…
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