十八:おいしいのか?これ…。
「えへへ…黒無常はあんまり甘味処とか行かなさそうだもんね…」
「ん?甘い物は好きだがー…ほら、冥府饅頭があるだろ?」
「そっか、それで満足しちゃうか…これ、食べてみる?」
「えーと、杏仁豆腐だっけ?」
「うん、なんか心太みたいのにみかんと…上のは苺だね。それに砂糖水をかけてるの!」
「ほーん……」

だらだらと部屋で過ごして、暇だなぁ…抱くかって考えてたら…
たまには街歩きしようと。
つまり、断られた(まぁ朝もしたもんな)わけで。
雑貨屋を見て回り、何やら創設祝いに的当てが開かれてるのに参加したり…
そして、飯屋で腹ごしらえした後、甘味処へ連れていかれた。
入って品一覧に目を通せば、すぐに『杏仁豆腐』を注文した。
好きなのかと聞けば、美味しくない?と言われる。
…俺は初めて聞いた名前だ。
それが気になって何も注文せず、届くのを待てば…
何やら白いものにみかんと苺が乗ったものが運ばれてきた。
これが杏仁豆腐か……うーん…?

「ほら、黒無常……口、開けて…」
「ん?……そこはあーん、って言うんだろ?」
「む……黒無常…あ、あーん……」
「あーー……………ん?んー……んーー。」

指摘すれば、途端に照れて目を合わせてくれないまま、一口貰う。
入れた瞬間、甘い汁が広がって白いものを噛めばそれなりに弾力があった。
寒天っぽいけど、ちょっと甘い。
そこに蜜柑の甘酸っぱさが混じった。
くどくない甘さに程よい食感。
うん、気に入るのも分かる気がする。

「……どう?」
「…なるほどな、この白いのには味あんまないんだな。」
「この独特な食感が好きなんだぁ。」
「うん、悪くないな。餡蜜よか食べやすいな。」
「気に入ってくれて嬉しい…!」

隣で嬉しそうに食べる。
俺も甘い物はまぁまぁ好きだが、みこの方がよく知ってて、よく食べるんだよな…
好物は別腹ってことかね。

「ん、黒無常も甘い物好きみたいだけど、何が好き?」
「…んーー……そうだなぁ…饅頭もだが、おはぎとかも好きだぞ。」
「ふーん…餡子が好きなんだ?」
「おう、餡子でも粒あんが好きだな。」
「なるほどねー…だから差し入れのあの饅頭食べたんだ…?」
「う…あ、あれはー…そのー……なっ?」
「ふふ、黒無常のことまた知れて嬉しいな。」

確かに。
お互いの身体のこと、内面の事は知り尽くしたが…
好みの話は俺達が食に関して、あまり関心がないのも原因だろうが、してなかった。
俺達は関係なくとも、みこは食べなきゃ死ぬ。
あー、そっか。
食べるものでも、今度は美味しい物とか好きな物を贈れば良いんだな!
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