二十:こっち来て。……もっとこっち…もっと。
「どうしたの…?あ、あまり見られると恥ずかしい…」
「照れないで…ほら、もっと寄って…」

さっきから執拗に白無常が近づくよう言ってくる。
縁側に座る彼の手元には徳利が五本あった。
もしかして…酔ってる…?

「ね、ねぇ…白無常…酔ってるの?」
「……僕が酔ってる?…そう見えます?いいえ、酔ってません!」
「……酔ってる……」

少し乱雑になった言葉遣いに酔っていることを確信する。
振り向いて見つめる目も座ってしまっているし…
珍しいな……白無常ってお酒強いはずなのに…
そこそこ強いお酒を沢山飲んでしまったのかな…

「ねぇ、白無常…お酒は何飲んでるの?」
「はい?これですか?これは……米焼酎です!」
「焼酎…?!…純米酒とかじゃないから…酔ってるんだ…!」

確か日本酒より焼酎の方が酒度が高かったはず…
それを五本分も飲めば、さすがに白無常でも酔うよ…!
えっと…酔った時は冷たいお水だっけ!
微妙に距離を置きながら近づいていたのをやめて、台所へ向かう。

「どこ行くんですかぁ!こっちと言ってるのに…」
「きゃあっ?!し、白無常…重い…!」
「僕の事好きなんでしょう…?んー…?ねぇみこ?」
「うぅ…お酒臭いよぉ…!や、やだ!口つけないで!」
「む……別にいいです…触るところはたくさんあるのでー。」

ふらふらと歩きながら追いかけてきたのか、廊下の途中で捕まってしまった。
足元が縺れて、二人一緒に転けてしまう。
口吸いをしようと顔を寄せてくれば、強烈な酒の匂い。
私、黒無常よりお酒が飲めないし…それに匂いで酔いそう…
上にのしかかったまま退かずに、それどころかそのまま寝巻きを脱がしてくる。
重たくて力も強くて…酔っぱらいなのに何でこんなに…?!
あ…酒呑童子もずっと酔っぱらいなのに鬼王なんだっけ…
ってそうじゃない!
前にも酔ってしまった白無常は見たことあるが、途中で寝たりした記憶がある。
つまり、このまま流されてしまえば、私は裸のまま冷える廊下で寝ることになるかも…!
それだけは絶対やだ!
体を思いっきり捻ったりして大暴れしてやる。
そうすれば、ころりと上に乗った白無常が転がり落ちた。
そして廊下の下に落ちた…
半分寝たまま動いていたのか、目を閉じたまま動かない…顔が青ざめていく。
わ、私…何も知らない!
急いで部屋に帰って布団に潜った。


「あ………お、おはよー…」
「…みこ、気がついたら外で寝てたんですが…何故だか知ってますか?」
「へ…え、さ、さぁ…?夜風に当たるとか言った後、私寝ちゃったし…」
「ふむ……そうですか…」
(よ、良かった!覚えてない!)
「いや、僕は確かに廊下でみこを押し倒したはず…嘘、ついてませんよね?」
「…??!!!」
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