出会い
決戦平安京限定スキン「蒸気.断金者」モチーフ
本国で発表された蒸気世界の小説を知っていると読みやすいかも。


ギルドの隠れ家から外に出る。
俺のいる地域は、お世辞にも治安が良いとは言えん。
変な病気もよく流行るし、皆金に困っている。
家も水も空気も食べ物も悪い。
くそったれた世界だと思うには十分な程、悪条件の揃ったこの地域。
他の傭兵達の様子見がてら、町を歩く。
町と言っても寂しいもんだ。
ふと、枯れた噴水の塀に腰掛け泣いている少女が目に止まった。
金は貰えそうにないが…
なんと言うんだろうか。
兄としての性分が抑えられなくて、放っておけなかった。
泣きじゃくる少女の足元に跪いて、声をかける。

「なぁ、お前…何でそんなに泣いてるんだ?」
「ぐすっ……ひっく……あなたは……だれっ?」
「まぁ…ただの通りすがりだ。」
「…すんっ……はふ…っ……ぅ……」
「何がそんなに悲しいんだ?兄ちゃんに話してみな…それだけでも結構気が楽になるぞ。」
「……ぐすっ……わたしね……小さい頃に…親が流行病で死んじゃって……」
「…うん…」
「…でもっ…親戚の優しいじいやが私を育てて…くれてたの……ぐすっ…」
「ほぉ………ん?そのじいやは今どこに?」
「……………殺されちゃったの……ぅうっっ…!」
「な…?!……すまん…!…だが、どうして殺されたんだ…?」

泣きながらもポソポソと全てを話してくれた。
この辺りの輩は相当に悪いとは知ってたが…
まさか、ただ人を殺したいだけで適当に通行人を引っ掛けるとは…
金も取って、家も燃やして…許せんな。
少女は暫く泣いていたが、味方がついたと思ったのか、少し落ち着き始めた。
顔を覆っていた手が下がっていく。
すると隠されていた傷が露になった。

「どうしたんだ!?その傷…殴打と…索状痕…?」
「急に撃たれて…訳が分からなくて!咄嗟に叫んだら、殴られて…首を…」
「………」
「それに…『金は使える奴が使ってこそ意味がある』って言って……もう悲しくて…!」
「とんだゲス野郎だ…」

痛々しく紫に変色した頬の痣を触れないようになぞる。
その後、じいやの体はどうしたのかと聞けば、近くの武器屋の人に助けてもらい、安置所へ連れていかれたらしい。
この辺りは病のせいで放置されたまま腐敗することも多い。
ちゃんと葬られたことにひとまず安心した。
そして少女に一つ提案してやる。

「なぁ、お前…金も帰るところもないんだよな…」
「…」コクリ
「今日は俺が面倒見てやるよ。」
「…!!」
「ただし、条件がある。俺がお前に金と寝床を用意する代わりに…俺と契約しろ。」
「……けい、やく…?」
「俺は傭兵をやっている、お前が復讐を望むなら面倒を見よう。望まないなら俺は何もする義理がない。」
「………」
「さぁ……どうする?」
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