警戒
今日も集合時間から演練場へ向かう。
と、何やら大盛り上がりしている集団が隠れるように出来ていた。
昨日の話していた事が終わったのだろうか。
確認する為にも気づかれないように近づく。

「やべぇって…!!まじで!」
「これもう一枚用意しろっ、金なら出す!」
「うははぁ…!こんなの部屋にあったら毎日ウハウハだぞ!」
「俺的にも傑作だと思ってる。だがこれは一点物だ!」
「ふむ、随分と面白い物を作ったな。」
「…!!!!!」

集団の真ん中には何と、ミコが描かれた抱き枕。
しかも、大人向けな等身大の抱き枕。
昨夜も眺めた身体とはあまり近くないのが、想像であることを象徴している。
一番バレるとマズイ人物に声をかけられたからか、凍りついた空気が漂う。

「た…隊長…今日も………えっと…これは……」
「あぁ、私が回収しておこう。」
「ヒッッ…!!!!!そ、それだけは…!!やっとこれまでの物を描くのに…!!」
「努力は認めるが、やはり他の事に費やしてもらいたいものだ。」
「た、隊長〜〜〜〜ッッッ!!!」
もっとかわいい…

絵が見えないようにグシャグシャに丸めて回収する。
焼却炉にこのまま持っていって、報告はそれからだな。
と、入れ替わるように張本人が来た。

「今日はお仕事ないから、こっちに…それは?」
「……見ない方が良い。あとここに来ては駄目だ。」
「えっ?どうして?訓練の様子を見たいのに…」
「ここにはあまりにも疚しい者が多すぎる!」
「ひゃっ!きゅ、急にどうしたの…」
「とにかく一緒に来ると良い。」

背中を押して演練場から遠ざける。
後ろからは酷い落胆の声が聞こえるが、構えるわけがない。
これで鬼だと言われても、自業自得だと返したい。
誰もいない所まで来て、丸めていた物を広げる。

「へっ…!?こ、これって私…?」
「あぁ、そうだ。これで慰め物にしようとしていたんだろうな。」
「うぅ……って…待って?士気が上がってたのはこれが…?」
「間違いなくこれだ。本当に回収出来て良かった。」
「なんだかあそこに行きづらくなっちゃったな…」
「あまり隊員の事を信用しない方が良い。」
「………」
「馬鹿真面目と言われる私ですら、こんな男なんだ。分かってくれるだろう?」
「…っ!……うん…」
「こんな絵より、目の前にいるミコ…それに昨夜の方がうんと可愛いぞ…?」
「───ッッッ…!!??!!」

お尻を堂々と撫でながら、わざとらしく囁く声に熱くなる。
ちょっと意地悪な姿にドキドキしながら、触る手を離す。
人気が少ないとこんなに堂々と触ってくるなんて…
最初の頃より随分と大胆になったよね…?
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