それは
「…………」
「………」
「……きれいだな…」
「……………」
「…………」
「着て、みたいか?」
「ひゃあぁっっ!!!??」
「驚かせてしまったな…ただ、熱心に見ていたから、少し気になって。」
「うぅ…盗み見しなくても、声を掛けてくれて良かったのに…」

いつも購読している雑誌を普段以上に、読んでいたのだ。
楽しみの邪魔をしたくはない。
だが、そこまで夢中になるものが何なのか気になってしまう。
私がシャワーを浴び終わった事にも気づかない程の夢中度。
視線を、意識を奪う程の物が何なのか。
背中越しに見れば、そこには純白の衣装。

「ウェディングドレスは女性の憧れ…ミコもそうだったんだな。」
「へ…いや…私は…そういうのじゃ……」
「ん…?じゃあどうして?」
「り、リシャさんならどんな物を着るのかな!って考えてただけなの!」
「あぁ…皇女になる方だから、これよりももっと立派な物だろう。見るのが楽しみ?」
「うん!結婚式がどんな雰囲気なのか気になって!」

本心を出せていないのが丸わかりだが、言いたくない事には触れない方が良い。
本当は何と言いたかったのだろうか。
君はどんな気持ちでその衣装を見ていたんだ…?


「何だか浮かない顔をしているね。喧嘩でもした?」
「え……いえ、特に何もありませんよ。」
「まぁ、君とミコが喧嘩なんて、天地がひっくり返る位の衝撃だけどね。」
「少々注意を怠っていたみたいですね…」
「大丈夫だよ、一緒に気分転換でもしに行こうか。」
「ですが…」
「ここ最近座りっぱなしで、退屈してたんだ〜。付き合ってくれるね?」
「…もちろん、お付いたします。」

シュネル様に余計な心配をかけてしまった。
私はただ、昨日の事を思い出していただけのつもりだったのだが…
自分で思う以上にどうやら態度に出てしまっていたらしい。
王座から立ち上がり、階段へと向かう。
シュネル様が向かう方へと着いていく。
気分転換で上階へ行く…
これはいつもの場所しかない。

大扉を開ければ、城内だけでなく城下町をも望める。
外へ出られない間、退屈しのぎが出来る場所。
この見晴らしの良いバルコニーで、陽と風を浴びながら、景色を眺める。
窮屈な城内と変わって、開放感のある空間。
そして、語らいの場でもある。
王という肩書きを置いて、友として話をする時もここへと訪れるのだ。
壁にもたれかかって景色を眺めるシュネル様を真似て、隣に並ぶ。
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