予想外
こっそりと付き合って。
ラブラブなのは丸見えなのに、決して公表しようとはしない。
あの二人も公表しちゃったって、応援してくれる人の方が圧倒的に多いだろうに。
だけど本人達が嫌がってるから、黙ってないといけないね。
仕分けられた書類に判を押すだけの作業、徐に話しかけられる。

「あの…シュネル様。」
「ん?」
「えっと…リシャさんの婚約衣装ってもう決まりましたか…?」
「うん、もちろん。なになに?ミコも気になるんだ?」
「うぅ…っ………ウェディングドレスを着た人が、とっても綺麗で…だから楽しみなんです!」
「そうなんだね。ミコは着ないのかい?」
「へ…?私ですか…?」
「君もタイウィンの恋人だ。いずれは夫婦になるんじゃないの?」
「えへへ……私もそう考えてますけど……タイウィンさまはどう思ってるのか… 」
「あれ?結婚前提で付き合ってるのだと…」
「そ、そうですよ!告白の時はそうだったんです。」

それなのに彼がそういう気持ちなのか分からない…?
僕の聞き間違い?
あんなにもラブラブで、昨日なんてタイウィンの惚気悩みまで聞いたのに。
それなのにミコは違うって言うのかな?

「確かに公表はしないでおこうねって約束したんです。」
「おや、最初からそんな約束をっ。」
「で、でもですね!結婚って式を挙げなくても大丈夫なんですよね?」
「え?あぁ、うん。書類さえ提出すれば…」
「秘密のまま結婚も出来るのに…私ももちろん頷くのに……」
「え…えっ…泣かないで…?」
「だって…だってぇ…!結婚しようって言ってくれないんですもんっ…!!」

ここが公務室で本当に良かった。
密室だから、誰かにバレるとしてもそれはローマンかタイウィンだけ。
ぽろぽろと涙を流し始める彼女に慌てふためく事しか出来ていないけど…
手元にあったハンカチで目元を抑えて、泣き止んでもらおうとしてみる。

「ドレス見てても…!着てみたいのって聞いただけで…着せてあげるはともかく!結婚の文字も出ないなんて…!」
「うんうん……それは、寂しいね…」
「ドレスを着たいなんて思ってません。だけど、結婚しようって言ってほしかった…!」
「そっか……ミコはそう思ってたんだね……タイウィンも気が利かないね?」
「愛してるって言ってくれるのにっ。何で…っ。」

言い淀んでいた事が、今ここで爆発してしまった。
あーぁ…こんなにも女の子を泣かせちゃうなんて。
タイウィンは酷い男だなぁ。
これは少し叱ってあげないと駄目だね。
3/6
prev  next