1.タイウィン
※本編とは異なる世界線
レファンドス王国の端…城下町からは程遠い場所にある村。
そこが私たちの故郷。
同じ村に生まれ、家も近かった私と彼女は毎日顔を合わせる仲だった。
やがて親元から自立し、私は王国の騎士団に入団するため剣の稽古を。
彼女は…ある日をきっかけに精霊の守り人となった。
その精霊から譲り受けた神弓と心通わすために、片時も弓を離さずに過ごすように…
荒れを知らない大地は、美しかった。
広い平地に案山子を的に素振りをし、体力と筋力をつける。
村の近くにある湖を何周も走り機敏さを増す。
そして騎士団を志しているのを聞いた村人達から魔物退治を頼まれた。
遅生まれな私たちは若者がいなくなった村を活気つけていた。

「タウ、休憩しよ?」
「あぁ…ありがとう。」
「はい、これ使って。」

私の入団を一番に応援してくれていた幼馴染、ミコが昼飯を持ってきてくれた。
毎日、早朝から鍛える私の代わりに食事のサポートをしてくれた。

「始めた時より随分と太刀筋がよくなったよね。」
「そう…かな…」
「立派な騎士様になったタウはきっと…もっと凄いんだろうなぁ…」
「あぁ…そうだ、エントリーシートは届いた?」
「うん!今朝届いてたよ、見る?」

バスケットに乗せられた紙を手に取って見せてくれた。
猪肉と葉野菜をぎっしりと挟んだサンドウィッチを片手にシートを見る。

「わぁ…この人強そうだよ…有力候補だって。」
「イカついな…鉄球使いか…」
「上位三人は顔付きなんだね…棘付き鉄球…槍の名手…二刀流…!はわ…」
「貴族出身が多いな…やっぱりこういうのは講師が必要なんだろうけど…」
「実戦してる人はきっと少ないよ!ほら、前にオオトカゲやっつけたでしょ?タウなら大丈夫!」
「魔物と人はまた違うからなぁ…」
「んーもうっ…」

魔物は人と違って武器も持っていなければ防具もない。
言ってしまえば力づくに当たりに行っても倒すことはできる。
けど、闘技は違う。
あくまでも目的は戦意消失。

「エントリーしちゃったからもう戦うしかないけどね。」
「私はとても楽しみだよ…」
「どうして?守護騎士になってほしかったのか?」
「ううん、こんなにも強くて優しい騎士様を皆に知ってもらえるなって。」
「えっ…ミコ…!」
「えへへ、タウが戦ってるところを見れるのが楽しみなの。」
「…っ…」

褒め言葉をかけられて思わず、照れてしまう。
騎士になろうと思ったのは君を…ミコを守るためなんだぞ。
あの時何もできなかったのが悔しくて…
せめてこれからを、守り人となった君を守ってあげられるように。
そのために日々努力しているんだ。
………本人にはこんなこと言えるわけない…

「でも、怪我しないでね…」
「大丈夫だよ、闘技なんだから。多少は仕方ないけど…」
「……闘技まであと三ヶ月…全力を出せるようにサポートするね!」
「うん、戦い抜くまでよろしく。」

寒くなってきた風に当たって少し冷たくなった手を握る。
あまり綺麗な手じゃないけど、ずっとこうやって握らせてほしい。
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