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ついにこの日が来た。
闘技本番。
まずは下級チーム…平民チームから始まる。
朝ともあり、観客は疎らだ。
相手も私と同じ平民とあり、装備は平凡だ。
真っ当に剣戟を繰り広げる。
鉄鋼同士がぶつかり合う音が控えめに盛り上がる闘技場に響く。

「ハア"ァッッ!!!!!」
「くぅっ…!?」

相手の剣を吹き飛ばし、柄が地面についたことにより勝負が着いた。
平民ブロックは合計で8人。
あと2人と戦えばブロック優秀だ。
控え室から次の試合を観戦する。
見ていると太刀筋に迷いが出ているのがはっきり分かる。

「タウさっきの吹き飛ばしてて、凄かった!」
「ん、まぁどうにかやっていけそうで良かったよ。」

闘技場の敗北基準は、武器が手を離れ、持ち手が地面につく。
または尻もちや膝をついてしまった時だ。
万が一、体を傷つけてしまった場合は、故意でない限りで勝利とする、となっている。
そう…剣を扱いきれていない相手には、巻きとってしまえば勝てる。
その巻き取りに手こずりはするが…
観戦していると勝負がついたようだ。
相手の剣先が折れてしまっている。
武器破損により試合継続不能。
武器も貴族でないと上等なものは握れない。
私の獲物はそう簡単に折れるものではない。
そこそこ名の知れた鍛冶屋の主人が村に住み着いており、頼んだ所依頼を達成すれば打つと条件を出された。
その条件を飲み、倒した証を持って行って打ってもらったこの剣…
見た目はそう変わらないが、そこらの武器屋で買うものより数段硬い。
芯はしっかりしているが、軽く扱える。
血に汚さずこの闘技を勝ち抜くことが出来ればいいのだけど。


平民ブロックをあっさりと勝ち抜いてしまった。
初戦は武器を吹き飛ばし、その次は押し勝ち。
最後は寸止めで勝利を手にした。
剣戟を繰り広げた最後、見えない速度だったのに首元をスレスレで剣を突き出していた。
相手はその剣幕に「参りました」の一言。
凄くかっこよかった。
一息つきながら戻ってきたタウを出迎える。

「タウ!さっきのヒヤヒヤしちゃった!」
「あはは、私も怖かったよ。でも変に動かれなくてよかった。」
「これでブロック優勝!今日はお疲れ様だね!」
「うん、となると次は…明日の…Cブロックの準々決勝かな。」
「この後はどうする?お昼どこか食べに行く?」
「んー…城下町初めてだから歩いたら疲れそうだよ。」
「じゃあ宿に戻ってオススメのお店に行こっ。」
「あぁっ待って、ほら、はぐれるよ。」

そう言って手を差し出す。
人混みに慣れていないとは言え、恥ずかしいな…
そっと手を乗せれば、しっかり握られる。


宿主オススメのお店で美味しいものを食べて、少し休憩。
この後はどうするのかと思えば、広場の場所を聞き、移動する。
何となく着いていけば、また素振りし始めた。
念には念を…かな?
それにしてもさっきのタウ、とってもかっこよかったなぁ…
切ることを忘れた、長い銀色の束が揺れるのをぼーっと眺める。

「…っ、…ミコ。」
「………んー…?」
「風邪ひいちゃうよ、さぁ日が落ち始めたから帰ろう。」
「ん……いつの間にかこんなに寝ちゃってたなんて…」
「慣れない場所だから仕方ないよ。」

賑やかだった公園も人が散らばり始めていた。
あまり遅くまでいると警護団に注意されてしまう。
額にうっすら汗を浮かべ、あがった息を落ち着かせながら歩くタウ。
いつも見ているはずなのに、ドキドキする。
ますます強くなって輝く姿…
どうしようもなくトキめいてしまっている…
抱いている恋心が燻りだした。
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