被害2-3
恩を売るためのこの任務。
小屋にある物を片っ端から預かっていく。
この辺りの物品を確認する為にも呼ばれている。
少し焼土や鉄の臭い混じりなタイウィンの匂いに包まれながらも、手帳と見比べながら指示を出す。


「補佐殿のお痛わしい姿…我々がいておきながら…!」
「大丈夫ですよ…私の不注意ですから…」
「だが、この辺りの雑魚共に少しは知能がある事が分かった。これも収穫だ。」
「………」
「帰路は絶対お守りいたします!」
「貴様らは後をついてくるだけでいい……ミコ、来い。」
「…はい…?……!」
「戻るぞ、案内しろ。」

また抱き抱えられた。
それも自分の片腕に座らせるようにして…

「た、タイウィンさま!こんな事したら、腕が…」
「それは後でお前が処置するんだ、当たり前だろう?」
「……はい……」

帯剣出来なくなった剣は、利き手で無造作に持ち歩く事になってしまった。
隊員達もこの光景にザワつくしかない。
少々混乱気味の隊に『何か文句があるのか』、と言いたげに睨みを効かせた。
そうすれば一瞬で乱れは無くなり、列を成した。
ずっとドキドキしてばかりだ。
こんなにもあからさまに、心配してくれる事に恥ずかしくなってしまう。
タウは補佐に任命した時に、堂々と私のことを『俺の女だ』と周知させてはいるものの…
仕事中はそんな素振りを一切見せないし…
むしろその事に気を使うものなら、罵声を浴びさせる程なのに…
少しだけ…今甘えてもいいのかな…
そうっと首元に擦り寄れば、顔を寄せてくれた。

「後で教育してやらねばな…今度絡まれたら、分かってるな?」
「…っ!」

やっぱり怒ってる…!
絶対泣いても許してくれない雰囲気だ…!
ごめんなさい…!もう足は引っ張らないから…!

「……だが…特に怪我がなくて良かった…俺は按じているんだぞ。」
「…ごめんなさい……」

優しい声色で声をかけてくれる。
本当に心配してくれていただなんて…
なのに、私はそれを煽るような事ばかりしてしまって…
どうしたら不安を拭ってあげられるかな…
もっと精進して、心配をかけないようにしなくちゃ…!


「なぁ…今日の隊長様、ミコさん贔屓凄くないか?」
「俺もあんな風にされたい…」
「いつも手厳しいもんな…分かる…羨ましい…」
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