にゃぁ?!
定刻通りに起き、気持ちよさげに眠る顔を愛でる。
日課の鍛錬をしっかりと行い、朝を迎える準備をする。
確かに今朝起きて見た姿は、いつも通りだったと思うのだが…
朝練を終えて、再びベッドに戻ってみれば…
猫になっていた。


いや、正確に言えば『猫耳が生えていた』と言うべきか。
獣人にしか持ちえない柔らかな耳が、ふにゃりと垂れている。
最近、復興に向けて走り回っている疲れが、ついに現れ始めたのか…?
いやいや、しかし、私の体はハッキリと目覚めている。
ならば、ドッキリ………ううん……
それにしては生き物らしい様相だ……

「ん………ん…ぅ……」
「…私はここにいるぞ…」
「……フ………すぅ………」
「………」

もぞもぞと動く手を握れば、満足気な表情になった。
耳もピコピコッと動いた…
…どう考えても猫になっている
試しにそっと触れてみると、確かな感触と温もりが伝わる。
うん、これは生えている。
間違いなく彼女自身の耳だ…
だとしても、起きて戻ってくる間に一体何が?
警備はないとは言え、城の敷地内である限り安全性は高いはずだが…
それともミコが、何か魔法を試したのか?
可能性で見れば、こちらの方が高いが…
だが、一体どんな魔法を使えばこんな結果に?
更には何故一夜明けてから?
ますます謎ばかりだ。
そんな心配をよそに、時計が鳴るまで穏やかに眠っている。
果たして起きた時に、『猫になっているぞ』と言うべきなのだろうか?
どうせ鏡を見るのだから、自分で気付く方が早いかもしれない…
私が言ったとて、下手な冗談だと笑われるかもしれない…
原因不明、当の本人は露知らず。
頭が痛みかけていると、時計が鳴り始めた。
数秒鳴らした後、タイマーを押してゆっくりと目を覚ました。

「……は…ょぅ……」
「あぁ、おはよう。」
「へへ……ん〜…」
(珍しいな…おはようのキスを求めるなんて。)
「んっ。」
「……、…ふにゅ…」

甘えるように胸にスリスリと顔を擦り付けている。
その所作は完全に猫だぞ…

「んにゃ………んー?私こんなことしてる場合じゃない…朝ごはん用意するねっ。」
「あ、あぁ…」
「今日は〜〜シリアルにヨーグルトと〜」

付け合せを考えながら洗面台へと向かう背中を見送る。
扉が閉まって姿が見えなくなった数秒後に、盛大な悲鳴が起こった。
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