にゃん…
ペタリと耳が折れている。
そして、どうやら尻尾も生えているらしい。
困った顔をしながら頭を抑えて、座り込んでしまった。

「まさか…何で……」
「…?心当たりがあるのか?」
「う………」
「教えてくれないか?私は心配で堪らない。」
「…うん………あのね…私もリシャさんみたいにペットが欲しくてね…」
「ペット?」
「使い魔でも良かったんだけど……簡単な幻術をローマンさんに教わったの。」
「ふむ、それで?」
「で、試してみたんだけど…何も出なくて、失敗した挙句にこんな事になるなんて…」
「そうか………君は猫が欲しかったのか。」
「ぱっと思いついたのが、猫ちゃんだったの!だから、気にしないでっ。」
「うん…?まずはローマンに聞いた方が良いな。失敗した時の対処も知ってるだろうし。」

猫を飼いたかったのかと思ったが、顔を真っ赤にさせて全力否定された。
この姿で外に出て、誰とも会わないまま行けるとは限らない。
部屋で待つように言って、ローマンがいる場所まで向かうことにした。


「……お前にしては大した冗談だな?」
「冗談なんかじゃない。」
「まぁ、わざわざ冗談を言いに、迎えに行く奴なんていないが…」
「治す方法を知らないか?」
「知らん…聞いたこともない。一体どんな失敗をしたら、そんなことになるんだ…?」

教わり元のローマンすら分からないとなれば、お手上げだ。
レファンドス随一の魔術師である人が知らないなら、どうしようもない。
残念な結果を伝えるしかないか…

「ミコの様子を見に行っても大丈夫か?何か分かるかもしれない。」
「あ、あぁ!できるならそうしてほしい。」
「分かった、じゃあ出る準備を終わらせてくる。」

扉が閉まってから十数分後、いつもの騎士団長の姿で現れた。
随分と待たせてしまっている、早く朗報を連れて行かねば。
急ぎ足で部屋へと戻れば、落ち込んだ様子でベッドに座っていた。
声をかければ、気怠げに頭を上げて驚いた顔をする。

「はわわわっローマンさんっ!にゃ、なんで…!」
「うむ…これは立派な獣耳具合だな…」
「耳だけじゃない、尻尾もあるんだ。」
「ふにゃー!真面目に答えなくて良いのっ。」
「うーん………姿を変えられた時に、変化を解かす薬がある。それを試してみるか?」
「へっ!?そんなのがあるんですか?飲みます!!」
「よし、持ってくるから待ってろ。」

解決の糸口が見えて、安心した。
が、飲んでも何も起こらなかった。
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