背を追いかけて
アレンシノクス様の武術と違ってモルト様は槍術。
ただ肉弾戦も勿論強かった。

「そなたは今いくつだ?」
「11歳ですけど…」
「まだまだ幼龍ということか。それにしてはかなりの実力。」
「…!ありがとうございます!」
「力は充分だが、持久力は劣るな。」

太い尻尾で顔を殴られて真後ろへ吹っ飛んでいく。
アレンシノクス様が咄嗟に受け止めてなかったら、壁にぶつかっていた。
心配そうに私を見つめるアレンシア様に胸が痛む。

「力加減というものが出来んのでな。間接的に鍛えるしかなかろう。」
「大丈夫か…?帰りたくはないか…?」
「大丈夫です…!…ケホッケホッッ……」
「アレンシノクス、甘やかすな。」

神殿を出て、広い山地へと移動した。
一つの大岩を軽々と持ち上げ、目の前に置かれる。
そして、この岩を押して山を一周しろと言われた。
さっそくグッと押すとほんの少し動いた。
これじゃあ明日の日暮れになっても回りきれない!
精一杯の力で押して、一歩ずつ進んでいった。


「もう良い、日が暮れた。帰るぞ。」
「で、でもまだ半分…」
「我が良いと言っている。大人しく聞け。」
「は、はい……」
「それと、ミコは我の巣で寝泊まりするのだ。」
「それはどういう意味じゃ!?」
「そのままの意味だ。朝から来るのを待つのは面倒だからな。」
「あ、ありがとうございます!」
「さて、アレンシア…そなたも帰るといい。心配はいらん、時間外に手を出す程、我も狭心ではない。」

帰ろうと歩こうとした瞬間、膝から崩れ落ちてしまった。
座り込んだ私の腕を引き上げ、モルト様の脇に抱えられる。
じっとモルト様の顔を見て、ゆっくりとアレンシア様も帰っていった。
モルト様にはアレンシア様のような優しさはないけれど、決して粗末には扱わない。
本当に片っ端から殺すような人なんだろうか…
静かな場所でぐぅぅっと空きっ腹が鳴いた。

「食べ盛りの頃か?部下にでも食べ物を用意させてやろう。」
「ごめんなさい…迷惑をかけて……」
「そなたは我の言葉を素直に受け取れば良い。」
「…はい。」
「我に気に入られたければ努力することだな。」

今朝のロマンチックな光景とは真逆の扱い。
モルト様は強い人と戦うことしか興味がないのかな…
暫くは頑張ってみようと思っているけど…
そういえば泊まりになるなんて思ってなかったから、お母さんとお父さんに何も言ってないままだ…
4/12
prev  next