触れ合って
巣へと戻ってきて、一番に腕の処置をされる。
秘書の人が腕を固定できるように、包帯を巻いて痛み止めの薬草を煎じた。
とても苦いけれど、治りも早くなる。
一日でも早く治して、モルト様に飽きられないようにしないと…

「そなたは初め、我の顔を見に来ただけなのであったな?」
「は、はい…よく覚えてましたね…本当に最初は、最強の龍なる存在を見てみたかったんです。」
「フッ…しかし、未だ我の実力を知らぬであろう?」
「……お恥ずかしながら…」
「ミコ、強者と言えど力をひけらかしては、弱点を晒すようなものだ。無闇に見せてやるものでもない。」
「弱点…モルト様にも弱点があるんですか?」
「フクク……教えてやろうか?ここは我とそなたしか入れない場所だからな…」
「…!え…えっと……い、いいのですか…?」
「そなたの力如きでどうとなる物でもないのだよ。」

胸の真ん中にある装甲へと指を導かれる。
ここに逆鱗があるらしい。
どうしてそんな大事なことを教えてしまうのだろう…?
装甲を指でなぞり、顔色を伺いながら首元へと続くのをなぞる。
かかった髪を指に巻き付けてみる。
淡い色をした毛先は柔らかくて、見た目より量があった。

「我に触れるのは面白いか?」
「ごめんなさいっ、つい…」
「気安く触れるのもミコだけだろうよ。」
「モルト様もお優しくなりましたね。初めなら、絶対指を折られていた気がします。」
「なんだ?折ってほしいのか?」
「ち、違いますっ。」
「なに、冗談だ。そんなに真に受けずとも良い。」

少し緩んだ表情を記憶に焼き付ける。
本当に、本当に出会った当初と比べてモルト様は私に対して寛容になった。
どれだけ納得のいかない結果になっても、見捨てられなかった。
気に食わないことをされると、尻尾で殴られた事も随分と前だ。

「私は少しでもモルト様のお気に入りになれていますか?」
「肯定すればそなたは調子に乗るだろう?」
「もちろん、嬉しいですから!」
「そなたといる時間は少なくとも、退屈しのぎにはなっていると言っておこう。」

それから腕が治るまでの間、モルト様の介抱は厚いものだった。
協力の意での行動であって、好意からのものではない。
だけど、気に止めてもらえることが嬉しい。
ちゃんと私に向き合ってくださるモルト様。
本当はこんなにもお優しいんだ…
だけど、いつまでこの日々は続くのだろう?
この充実した毎日がずっと続けばいいのに。
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