その距離は
怪我をしている間、アレンシノクス様が私に会いに来てくださった。
そして、色々質問された。
中でも、特に分からなかったのが…
『どうやってあの暴君を鎮めているのか』
ここ二年で無意味に殺される龍の数が、減ったと言うのだ。
でも、私はあの手合わせの時以外、モルト様が誰かを殺すのを見たことがない。
正直にそう答えると、とても驚いた顔をした。

「あやつも変わるものなんじゃな…!」
「本当にモルト様って会ったら殺す!な人なんですか?」
「何故主はその一面を知らないのじゃ!?もう三年も一緒におるというのに…」
「モルト様、とってもお優しいですよ。優しいって言っても普通の感覚とは違いますけど…」
「あやつが優しい!?な、な、な…何か洗脳でもされておるのか…?」
「心外だな、アレンシノクス。我はそれ程器用ではない。」
「あ、モルト様…おかえりなさい。」
「モルテリクス、主はミコの前では誰も殺しておらぬのは本当か?」
「愚問だな。外へ出ることがないのだから、機会がないのも当然だろう?」

口角は上がりながらも、ベチンッと尾が地面を叩きつける。
もしかしてさっき、何か気に食わないことでもあったのだろうか?
ご機嫌が悪いと少し居心地が悪くなるから、治ってくれると良いんだけど…

「何なら、先程虫けらを一匹潰したが。」
「なに!?やはり何も変わっておらぬかったか…」
「ミコを連れるだけで、相当嘗められるものだ。連れる気になるわけがない。」
「わ、私も…一緒にいるだけで、モルト様が馬鹿にされるのなら、お留守番の方が良いです!」
「そうか…まだまだ子供じゃから仕方ないとは言え…主も辛かろう?」
「私は大丈夫ですよ、だって弱いのは本当ですし。だから、もっと強くなる為にも早く怪我を治したいです!」

隣に音をたてながらモルト様が座る。
すると、腰を掴まれて膝の上に乗せられた。
片腕がお腹を押さえる。
アレンシノクス様が凄く驚いた顔をしている。
私はもう慣れた…時々座らせてくれる時間を堪能している。
以前された時に、何気なく何故乗せるのか、と質問してしまった。
モルト様は特に理由はない、強いて言うなら丁度いい感触だから。
そう、特別な感情はなくても、心地よく感じてもらえている。
私にとってそれがどれ程嬉しいことか。

「お主ら…どことなく似合いに見えるようになったのう…」
「ほんとですかっ。」
「フッ…ただの玩具にすぎない。」
「にしては、大事そうに扱っておるのが妾にも分かる。」
「簡単に壊してはつまらないだろう?」
8/12
prev  next