忘れたのか?
貴族達に押し付けをされる会議は嫌だと言って、会議場へと入ったシュネル様。
関係者以外入室禁止。
終わるまではこの部屋の警護にあたる。
同じく秘書であるミコも入れずに、外で待ちぼうけだ。

「なぁ、ミコ。待っている間、話をしないか?」
「うんっ、タウとならいっぱいお話してたい。」
「…、…この前、あの通りに…」

嬉しそうに笑った顔に、胸が高鳴る。
隣に立って、私を見上げる仕草。
思わず手が伸びて、髪を触ってしまう。
しかし、その事に何も気を停めない姿に、もっと触りたい欲が溢れる。
まだそんな仲ではないのだから、あまり触れるのも…

「ねぇねぇ…タウ…ちょっと聞いてくれる?」
「ん?」
「えへへ、あのね、タウは誰かに告白され た事ある?」
「いや、ない。近づきにくく感じられているみたいで…」
「えっ、そうなの?こんなにも格好良いのにね。」
「…、…」
「あのね、私ね、この前、男の人に告白されたの!」
「え…?」
「私に恋人はいるのかって聞いた後に、僕と今度お茶しませんかって!」
「そう、なんだな…」
「想い人がいるわけでもないから、思い切って次の公休日に約束したの!ちょっと楽しみにしてるんだぁ。」
「…へぇ……」

心に酷く冷たい物が流れ込んでくる。
今、想い人はいないのだと…
その男とお見合いする事を楽しみにしている?
へぇ…目の前にも、君を想っている男はいるというのにな。
楽しげに笑う顔が酷く憎たらしい。
確かに君への想いを言葉にはした事がない。
が、今までの私の気持ちは十分に伝わるものだと思ったのだが…
それはどうやら私の勘違いだったらしい。
君に伝わるようにもっと努力しないといけないな。
あぁ、その前に漬け入れようとする存在は、消しておかないといけない。

「その誘った人はどんな人なんだ?」
「えっとね…確か小隊の…………」
「……あぁ、そうか。なるほど、ならば君と会う機会もあるな。」
「私はみんな鎧着てるから、区別つけられないけどね。」
「軍団だからその辺りは仕方ないだろう。」

何の疑いもなく教えてくれてありがとう。
それに隊にいれば探す事も容易だ。
さて、今からどうやって妨害してやるか考えなければ。
シュネル様とローマン以外の男に会う?
私以外の男にその笑顔を向ける?
そんな事を許せると思うか?
早く、一番大切にしてくれる人が誰なのか、気づくと嬉しいのだが。
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