いい調子だ
そして迎えた公休日、例の男はきっと今頃泣いているだろう。
何せ合同訓練で遠征しているのだから。
ちょうど月日もいい具合に空いて、一週間より前に知れた事も大きい。
不満に思われることもなく、すんなりと二日前に開始することができた。
約束をした男はこの後どうするつもりなのだろうか。
また接触すると言うのならば、次の手を打たねばならない。
と、扉をノックする音が聞こえた。

「ミコです、タイウィンさまいらっしゃいますか?」
「あぁ、鍵は開いてるから入るといい。」
「失礼しますっ。」
「どうしたんだ?今日は確か、出かけるんだろう?」
「うーん、それがね、合同訓練隊の隊員さんだったらしくて…昨日お手紙が届いたの。」
「何と書いてたんだ?」
「うん、『すっかりと訓練の存在を忘れていました。不誠実な事は承知の上でまた機会があると嬉しいです』って。」
「そうか、わざわざ送ったんだな。」
「でも外部隊の人なら、生活が合わないね…お互い忙しい身で離れてたら、恋も愛も分からなくなりそう。」
「結婚した後の徴兵なら違っただろうけどな。」
「でもお互いまだまだ現役だし。それで、暇になったから来てみたの!」
「そうだったんだな、嬉しいぞ。何か飲むか?」
「タウのオススメをお願いしますっ。」

湯を沸かしに背を向けた後、うまくいった事に口角が上がる。
また会ったとしても、その気を削いでしまえば何も心配はいらない。
ミコも案外、紡ぎ合う恋をしたいらしい。
それならば、私がずっと昔から君への恋を紡いでいるぞ。
君が気づけば、君望みのラブストーリーが始まるだろう。
私から言う方が、もしかしたら早いのかもしれない。
しかし、本当にただの幼馴染、友達以上の気持ちを持つことが出来ないと言われたら?
それを考えると、その一歩がとても恐ろしい。
だから、私を選ぶか誰も選ばない。
この二つの道に絞る事ができれば、何も怖くない。
君に触れるのは、私だけ。
愛されていいのは王城内だけ、可愛がっていいのも私達だけだ。

「沸きたてだから気をつけるんだぞ。」
「ありがとう……ん…これはホットレモン?」
「疲れた体にいい作用があるからな。労いも込めて。少しだけ蜂蜜も入れたから、甘めになってると思う。」
「えへへ、ありがとう。じゃあ私も今度、お疲れ様の差し入れ用意しようかな。」
「それは嬉しいな。今から楽しみにしておこう!」
「もうっ、気が早いなぁ。ふふっ、何が届くかはお楽しみにっ。」
3/10
prev  next