ずっと
どうしたら君に、私を男として見てもらえるだろうか?
何をしたら、面倒見の良い心配性な兄代わりな肩書きを摩り替えられるんだ?
他の男からの誘いに躊躇なく頷くのが、少し気に入らないな。
一瞬くらい、私の事を想ってくれても良いんじゃないのか?


「うーん……」
「……何か悩み事か?少し休憩でもするか?」
「あ……はい…ありがとうございます…」
「詰めすぎても良くないしな…話せる悩みなら聞くが。」
「うーーん……私の気の所為かもしれないんですけど…なんと言うか…」
「うん?」
「ずーっと誰かに見られてるような…最近は誰もいなくても、監視されてる気分なんです…」
「……つまり、ストーカーの様なものか?」
「うぅん…それも違う気が……だって実際には誰もいないんですよ?自分の部屋にいても感じてるんですから。」
「…それは重症だな…部屋の中の居心地が悪いのは最悪だろう?」
「はい…だから、音楽を流したりして、気を紛らわせてはいるんですけど…」

それで今日もよく欠伸をしていたというわけか。
まぁミコはこの王城では、リシャを除けて唯一の女性官だからな…
焦がれる隊員も少なくはないが…
精神的に届くまで、想い患っている奴がいるということか?
何にせよ、よく眠れていないのが窺える。
一人で寝るのが安心できないのならば…

「俺の屋敷に来ないか?」
「えっ?」
「一人じゃ不安なんだろう?俺の所に来れば、リシャがいる。それに喜んで受け入れてくれるだろうしな。」
「あ………なら、そうしようかな…迷惑にならないのであれば…」
「飯も一人分位はすぐに賄えると思う。着替えだけ用意してもらえたら、大丈夫だ。」
「…じゃあ、お言葉に甘えて。」

ほっと安心したように表情が緩む。
ずっと気に病んでいたのだろう。
このまま放っておいて体調でも崩されたら大変だ。
悩みを打ち明けた分、いくらでも助けてやることができる。
ただの部下や仕事仲間ではなく、旧知の仲なんだからな。
友人として助けてやるのは、当然の事でもあるだろう?
不安な思いも和らいだのか、気を取り直してまた職務に就いた。
さっきより筆の進みが良くなっている。

互いに集中して、業務終わりの音が鳴った。
書類を持って政務室に運び入れ、シュネルの元へと帰る。
いつも通りに解散し、帰宅後にミコについて伝えた。
案の定リシャは大喜びし、屋敷内が少し騒がしくなる。
程なくしてやって来たミコを、暫くの間泊まらせる事となった。
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