任せてくれ
最近、仕事が終わった後にローマンと歩いて帰っているらしい。
聞けば、バレリット家で寝泊まりしていると。
それもストーカー被害によるもので、解決出来るまでは当分そうすると。
不安に思った時は、私の部屋に来れば良かったのに。
そういえば、あまり自分からは助けを求めにいかない子だったな。
極限まで自力で解決しようとする。
だが、目に見えない相手にはどうしようもない。
…ただ、ストーカーの影が気になる。
一体どんな奴が、ミコを怖がらせているんだ?
半休日な日に街へ遊びに行きたいと、リシャ嬢から頼みが来た。
一応、公務時間外のため鎧は置き、剣だけ持って待ち合わせ場へ向かう。
少ししてリシャ嬢と……ミコがやってきた。
なるほど、二人でお出かけか。
宿泊しているという滅多にない機会だからな。
遊びに行きたくもなるだろう。

「な、なんだか照れちゃうな…タウに護衛してもらうなんて…」
「ふふ、護衛だからって特別扱いしなくて良いのよ。普段通り接すればいいの。さっ、行きましょ!」
「今日はよろしくねっ。」
「あぁ、リシャ嬢との時間を楽しんでくれ。」

改めて守護対象に含まれると、照れくさく感じるらしい。
今日は私には構わず、楽しんでほしい。
思いっきり楽しんでいる姿を見るのも好きなんだ。
可愛い君の姿をたくさん見せておくれ。


「ひゃっ…!!す、すみません!」
「あー??おいおい、嬢ちゃん!!あんたのせいで、この絵汚れちまったよ!」
「え…えっと…」
「弁償なんて訳にはいかないし?けど、価値がなくなった物を売る訳にもいかないよなぁ?」
「…つまり、買い取れば良いんですか…?」
「話が早いじゃねぇか!この絵、560,000ゴールドするんだが?買ってくれるよなぁ?」
「ご、五十六?!そんなお金…」
「ミコ、ここにいたのか。リシャ嬢が心配してるぞ?」
「あ…たう……どうしよう…私…」
「アンタ連れか?その嬢ちゃんがよぉ、この絵を台無しにしてくれたんだよねぇ!」
「ほう…では、この私…レファンドス近衛隊長、タイウィン・ヘラッドが買おう。」
「なっ!?王の隣にいる奴じゃねぇか?!何でこんな所に!!」
「うん?高値で元から価値のない絵を売りつけて、どうするつもりだ?」

威圧を放てば、すぐさま腰を抜かしながら逃げていった。
下を見れば、ぽかんとした様子で、消えていった詐欺師の方を見ている。
あまり治安がよくないことを初めて実感したみたいだな。
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