もっと…
「あらあら…でも良かった。何かされる前に見つかって。」
「ごめんね…フラフラとどこかに行っちゃって…」
「気になる方へ行ってしまう癖はまだあったんだな……はぁ…本当に心配したんだぞ?」
「でも、ちゃんとタウが見つけてくれるから、安心だよ。」
「こーら、まずは逸れないように約束よ?」

私が見つけてくれる、か。
それはつまり、絶大な信頼を持っているということか?
力が抜けたように笑い、あどけない表情が見える。
あぁ、これは私にしか見せない笑顔だ…
どれだけ口説こうとも、芯からの気持ちから出る物は引き出せない。
どれだけ時を積み重ねようと、幼い頃の時間は覆せない。

夕方になり、歩く人が減り、思い思いの時間へと移ろっていく。
日が暮れてしまう前に帰る予定だと言う。
帰路に着く間リシャ嬢が閃いたように、私も夕食を共にしないかと提案された。
こんなにも急に言っても大丈夫なのだろうか…
家に送り届け、帰ろうとするも引き止められる。

「ね、せっかくだから、ご飯も多い方が美味しいわ!」
「ですが…用意という物もありますでしょうし…」
「それなら大丈夫!出る前にもう言ってるの!」
「つまり、最初から誘うつもりでいたのですか?」
「えぇ、そうよ。言うことを忘れてたのをさっき思い出しただけなの!だから、良いでしょ?」
「はあ……まぁ…そういう事でしたら…」
「えへへ…今日はタウとも一緒に夜もご飯食べれるんだね。いつぶりだろう…」

嬉しそうに言う君を見てしまえば、断る気持ちなんて吹っ飛んでしまう。
あぁ、そうだな。夕食は各部屋に用意されるからな。
昼も夜も一緒に食べるのは、とても久しいだろう。
リシャ嬢に背を押されながら、席へとつく。
奥から現れたローマンは、顔を顰めた。
どうやら、リシャ嬢の独断だったようだ。

「ふふふ…賑やかなのはやっぱり良いわね。」
「大家族みたいで、すごく気分が上がっちゃう…!」
「また我儘に付き合わせてすまんな…まあ、楽しんでいってくれ。」
「あぁ、馳走になる。」

運ばれてきた料理を堪能する。
向かいに座ったミコが美味そうに食べる姿と一緒に。
味も良かったが、景色の相乗効果もあって格段な美味さを感じる。
時折、美味しいねと相槌を求められる。
あぁ、本当に。
君と食べる飯は特別美味い…そしてこれが、君の作った物ならさらに…
…食事中に凝視は良くない。
帰るまで、この興奮を抑えていられるだろうか…
6/10
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