約束
仕事が終わって部屋へと帰ってきた。
まずは、夕食の用意をするのだけど、扉を閉めた音と同時に壁に押さえつけられた。
驚きのあまり、声も出ず、ぱっと目を開けると間近にタウの瞳が。

「君が『その人』の話をしている間は、考えてくれている時と同じ顔をしている…」
「……へ……」
「私が一番だと言うのに……どうしてそんなにも愛おしそうに話すんだ?」
「そ……それは……」
「なぁ…君はこうしてここに戻ってきた……だが心はどうなんだ?」
「…ど……どっちも…私にとって…大事な人、だよ…?」
「…それじゃだめだ…」
「でも…聞いて……私にとってはね…目の前にいるタウも造られたタイウィンさまも同じ、大好きな人、なの。」
「………それは本心か?」
「タウにとっては嫌かもしれないけど……でも彼だって私を大事にしてくれたのは、事実だもの。」
「………」
「ごめんね……だからと言って、タウへの気持ちは少しも変わらないし……そう…突然現れた双子みたいな感覚かな…」
「…双子?……確か、顔はそっくりだと言っていたな。」
「優柔不断って思うかもしれないけど……ひゃっ!?」
「すまない…君がどう言おうと、私は…私だけを見てほしいんだ。」

ベッドに押し倒され、指を握り押し付けられる。
苦しそうで、瞳が揺れている。
こんな姿、初めて見た…
ぎゅうっと大きな体がのしかかり、大好きな匂いに包まれる。
存在を確かめるように擦り寄る姿に、背に腕を回す。

「本当にすまない………こんな姿……」
「大丈夫……その焼きもちも嬉しい、から…」
「…………」
「ごめんね…いくら洗脳されてたとは言え、タウじゃない人の側にいて…」
「……いいんだ、ここに帰ってきたのだから…そうだろう?」

こんなにも辛い思いをさせてしまって、本当にごめんね…


翌日、午前から昼休憩までの時間をエダさんと過ごす為、魔法塔へと訪れた。
1階は王国一…いや、エウレカ1大きい図書館となっている。
魔導師さん達の目が一斉に刺さるのを感じる…
…いつもはタウが隣で視線を奪ってくれるのにな…
気まずく思いながらも、どこにいるのか探そうとすれば、横から声が聞こえた。
エダさんは入口のすぐ側の角で分厚い本を開いていた。
隣に座って、本のことを尋ねると歴史書だと答えた。
歴史書を読んでいると、様々な発見があり、そこから研究のヒントを得られるらしい。
本を読むのは好きだけど、さすがにこの量は桁が違いすぎるかも…
エダさんの研究への情熱を強く感じる。
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