引っかかること
最後の線を引き終わり、キッチリと整理された地図を遠目から眺める。
道の広さや数、建物の密集度、それに伴う治安の変化…
ぐしゃぐしゃに書かれた字を読み解いて、新しいメモ用紙に書き写していく。

「あの……一つだけ、私から聞いてもいいですか?」
「ん…?何でもどうぞ?」
「その……ミコ様とタイウィン様は、恋仲なのでしょうか?」
「───??!!!!」
「ふふ…顔が真っ赤に……大切にされてきたんですね。」
「え、エダさん…っ…」
「全ての意味が分かった気がします…お幸せにお過ごしくださいね。」
「…、…」

どうして平常心でいられなくなっちゃうの!
何ともない顔をしていれば、誤魔化すことだってできるのに!
せめてでも他の人にバレないように、深呼吸をして落ち着かせる。
他言無用をお願いすれば、勿論との声。
暫くして、休憩の鐘が鳴った。
お話のお礼を伝えて、次こそはお茶をしようと約束した。
出来上がった地図を片手に王城へと戻る。
政務室に入れば、まだシュネル様とタイウィンさまがいらっしゃった。
息を切らして扉を開けた私にシュネル様が微笑む。

「待ってたよ、おかえり。」
「はぁ……ふぅ…ふぅ……待ってた…?」
「地図は預かろう…さぁ、食堂へ行こうか。」
「タイウィンがね、君が戻ってくるのを待つって言うものだから。エダと話してきたんでしょう?」
「は、はい。昨日のお話をもう少し聞きたくて…」
「そうだったんだね。まぁお腹も空いたでしょう?歩きながら話そうか?」

二人に挟まれながら、食堂へと向かう。
製図した際の印象や大まかにメモの内容を伝える。
シュネル様の方も何とか持ち越しになった書類達を片付けられたらしい。
いつもの席に着き、ローマンさんと合流する。

「予定通り、午後は集会で大丈夫ですかね?」
「地図は出来たんだな?なら、大丈夫だな。」
「………髪が入るぞ…」
「…、…」
「…ふぅ……それでよく隠していられるな?」
「…!つ、つい…癖で……気をつける。」

耳に掛けていたつもりの横髪が、流れていたのを直してくれた。
よく髪を触るから癖になったのかも…
ふと、エダさんの話を思い出す。
……私だけだと…思ってたんだけどな…
…今は仕事!!モヤモヤしてる暇はないの!

「ミコ?」
「…はい?」
「何か気になることでもあったのかい?」
「え……いえ、地図作るのにちょっと疲れちゃったかもしれないです。」
「そう?集会まで休憩時間になったから、休むといい。」
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