終幕
フォークでグサリと刺しながら、モグモグと美味しそうに食べてはいる。
幼児じみた言動に、ヒヤヒヤする。
そもそもミコはどうして酒を飲んだんだ?
それに雰囲気から見て、相当な量を入れている。
明日も二日酔いに悩まされるかもしれないな。

「ねぇねぇっ、このパスタおいしいよっ。はい!あ〜んっ。」
「ん?……うん、うまいな。」
「もっとタウも食べて!はいっ!」
「ムグッ……んん……おちついてくれ…」
「え〜とっ、コップ……これ飲む!」
「待て!それは酒だ!こっちにするんだ!」
「やぁだ!お酒飲むの!」
「だ、め、だ!ジュースにしてくれ!」

「……隊長大変そうだな…」
「ラブラブすぎて、俺は辛い。」
「珍しいよな〜、きっとあれがミコさんの素の姿なんだろうな。」
「だろうな…あだ名で呼んでるの可愛すぎる…」
「というか、酔っ払った補佐さんってヤベェよな。すっげぇ絡み酒じゃねぇか?」
「絡み酒っぽいが、陛下と団長と隊長にしか絡んでなくないか?」
「え…身内だけ…?チャンスあるかと思ったのにショック…」

……会話も全部聞いているぞ…
確かにこれは絡み酒と呼ぶのだろうが、元々の性格上、他の人には近づかないだろう。
まぁ、私が近づかせないんだがな。
酔っているからと言って、絆そうとする奴も許さない。
とうの本人はとんでもなく不機嫌そうな顔をしながら、ジュースをチビチビと飲んでいる。
これで少しずつではあるが、酔いを覚ましてやれるだろう…
けち、ばか、けち、きらい…と小声でブツブツ言っている。
何を言われようと、今だけは気を許してやる訳にはいかない。


「ぷぅ〜っ……おなかいっぱい……おやすみぃ…」
「あ、おい………はぁ……ようやくか…」
「隊長、お疲れ様っす…」
「随分と散らかしてしまって、すまない…だが、ようやく私も落ち着いて食べられる…」
「どうぞ、どうぞ。満足するまで食べてくだせぇ!」
「ありがたく頂こう。」

腕にしがみついたまま寝てしまったミコ。
暴れん坊がついに寝て、平穏が訪れた。
利き腕を塞がれて少し食べづらいが、食べ残された物を片付ける。
あぁ、どれも美味い…
疲れている分、味も沁みる…
追加で代わりに皿に盛ってもらった物を、余すことなく平らげた。
後片付けは任せるとして、寝てしまったミコを運んでやらないとな。
汚した手や顔を拭いてやるのも一苦労しそうだ…
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