特殊状態
「…………」
「…タイウィンさま、物凄くお酒臭いです…」
「呑み比べ…したからねぇ。」
「勝負事には人一倍負けん気が強いですし…」
「さぁ…タイウィンはワインを何杯…いや、何本空けただろうね?」

今日は建国記念のパーティ。
レファンドスの街中も、城内も祭り騒ぎだ。
広い広場を利用して、パーティを開いたのは良いものの…
こういう時でしか出来ない大無礼講。
その一例に酒の強さを競う呑み比べがあったらしく…
挑戦とは言えど、断ることを基本しないタイウィン。
手を抜くこともせず、勝負に勝って泥酔した様子で戻ってきた。

「んー…重いよぉ…」
「ミコ……はなさないでくれ…」
「でも、動けないよ…」
「すきだ…すきだぞ、ミコ…」
「わぁ……甘えただねぇ。」
「こんなにベロベロになるなんて珍しい…酔いが覚めた後、絶対恥ずかしくなるよ…!」
「何が恥なんだ!私はミコが好きなだけだぞぉ!?あいしてる!!」
「い"っ…いたたたたた!!!強い!!強すぎる!!」
「うぅ……ミコ……」

小さいミコにしがみついて離れない。
少し屈んで顔を擦り寄せながら、甘えている姿に感嘆の声が漏れてしまう。
彼はいつも凛としていて、甘やかす側。
このギャップに僕までやられてしまいそうだ。
目が完全に座っていて、どこを見ているのか分からない。
だけど、変に刺激するのも怖い。
ほとほと困っているミコは可哀想だが、したいようにさせるのが一番だ。
巨体を引きずりながら、席に着こうと懸命に歩く。

「タイウィンさま、座りますよ!」
「すわる…?あぁ……待ってろ……」
「…?………!」
「さぁ、こい…」
「嫌ですっ、隣に座りま…!ひゃあっ!?」
「こっちだぞ…」

先に座って両腕を広げ、上に乗るように指示した。
もちろん、ミコは恥ずかしがって断り、隣の椅子を引いて座ろうとする。
が、軽々と持ち上げられて膝の上へ。
ガッチリと腰に腕を回して、肩に頭を預けた。
うーん…巨大な幼児がいるみたいだ。
周りも二人の様子をじーっと観察している。
タイウィンの貴重な姿は、見ておく価値がある。
これは明日、覚えていて行動を嘆くか、開き直るか。
それとも忘れてしまうのか。
素に戻った時の彼の態度が凄く気になる。
あとミコには叱られるだろうな。
交際を隠していたいのに、こんなに見せびらかす様な事をしたんだから。
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