形勢
重い体を乗せられながらも、料理を堪能したようだ。
食後のデザートもペロリと平らげ、ジュースを飲んで一息ついている。
後ろの銀髪はピクリとも動かない。
もしかして…寝てるんじゃ……


「たすけてください…」
「やっぱり寝てたんだね。」
「こいつ、飯は食ったのか?」
「え?うーん…始める前に少し食べただけだと思います…」
「なら、まだ残ってる分を部屋に置いといてやろう。また食べさせてやってくれ。」
「はーい…で、私はどうしたら良いですかね…」
「寝てる、のに、手強い、ね!」
「うーん…タイウィンさま!タイウィンさまってばぁ!」

絶対に離さないとでも言うように、腰に回った腕は動かない。
仕方なくローマンと近くにいた兵が力を合わせて、無理矢理こじ開ける。
肩に埋もれていた頭を上に向かせて、やっとの思いで外した腕。
椅子の上で無防備に寝る姿は、少し面白い。
ようやく開放されたミコは、大きなため息をついた。
そのまま、腕を持って引きずり部屋へと運ぶ。
大きなダブルベッドへと放り投げれば完了だ。
手伝った兵に先に礼を伝えて、持ち場へと帰す。
姿が見えなくなった後、改めて僕達に礼を言った。

「お世話になりました…」
「まぁ、羽目が外せて良かったんじゃないか?」
「うーん……」
「ミコは楽しめなかったかい?」
「そんなことはないですよ!美味しいご飯いっぱい食べられましたし。」
「なら、良かった。今日はお疲れ!おやすみ!」
「はいっ、おやすみなさい。」

手を振って見送ってくれる。
あーあ、明日起きた時の反応も見てみたかったなぁ。
また暇が出来たら、教えてもらわないと。

大の字ですやすやと眠っているタウ。
酔うだけ酔って、私がご飯を食べてる間に寝ちゃうなんて!
………
頬っぺたが赤くなってる……ふふっ、可愛いかも。
ちょっと呂律が回ってなかった喋り方も新鮮だったな。
重たかったけど、ずっと傍にタウがいて、落ち着いてたのも事実。
シャワーを浴びる元気もなく、揃って服のままベッドに寝転ぶ。
掛け布団を引っ張って、掛けてあげながら寄り添う。
広い胸板に頬を擦り寄せ、抱きついて軽く乗りかかる。
…いつものタウの匂い…
今日の自制のない行動は怒りたいけど、酔っていたから仕方ないよね…
それに、覚えてるかどうかも分からないし…
でも、タウがベロベロに酔うと甘えん坊になるなんて知らなかったなぁ。
いつもは呑みすぎないようにしてるから、知れて良かったかも。
7/9
prev  next