妥協
朝、目が覚めるとベッドの上だった。
昨日……確か、呑み比べをして……
…………
ミコを酷く困らせてしまったな…
起き上がろうとすれば、体が重いことに気づいた。
視線を下ろせば、抱きつくように眠る姿。
お互い服のまま寝てしまっていた。
そっと体を降ろして、横に向く。
気だるくて、頭が鈍く痛む。
やはり二日酔いしてしまった…
相手も多分、なっていると思いたいが…
すやすやと眠る頬を指で突きなぞる。
ふにふにと頬を触り続けていると、ふと指を掴まれた。

「……おはよ…たう、大丈夫?」
「おはよう、うーん……二日酔いしたみたいだ…」
「そりゃああれだけベロベロになってたらねぇ……昨日のことは?」
「…あぁ…すまなかったな…」
「…もうっ…ずーっと抱きつかれて、本当に困ったんだからっ。」
「すまない……つい、思っているままに動いてしまった…」
「思っているままに…?もしかして、ああやって見せびらかしたいってこと…?!」
「み、見せびらかすつもりはない!ただ、君と恋仲である事を隠したいわけではない…」
「……分かってるよ、普段は私の我儘を聞いて我慢してるって…でも……」
「うん………だからと言って、公にすることもない。心配するな。」

悩みに眉を顰める頭を撫でる。
君の気持ちを尊重するのが、一番だ。
周りが知らなくても、私の中では君が特別な存在である事には変わらない。
それにシュネル様に仕えている身としては、その方が都合が良いのかもしれない。
世には色恋仕掛けが効くと思われると、悪用されて破滅に導かれることもある。
…私が好きなのは、ミコなのであって、女性に興味があるわけではないが…
抱きついて頬を擦り寄せてくる。

「あ…今日はまだ寝る前と一緒だね。」
「ん?」
「二日酔いしたのなら、今日の鍛錬はお休みだからね!」
「それは…そうした方が良いのかもしれないが…一日たりとも抜かさずやるというのが…」
「だーめ!」
「………じゃあ君の監督下で、少しだけやらせてはくれないか?」
「むぅ……何をするか次第だねっ。」
「…筋トレ………」
「メニューは?」
「腕立てを300…スクワットを200…これを3セット…」
「多い…!!せめて100回ずつ!」
「分かった、負荷を増やすのも悪くない。」
「それじゃあ意味が無いよっ。」
「負荷は君だ…上に乗ってくれるだけで良い。モチベーションも高まるし。」
「……」
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