光明
「69…70…71…72…」
「……………」
「75…76…77…78…」

一定のペースで刻まれる数字。
タウの背中に抱きついて、腕の動きと共に上下する。
下がる度に肩甲骨が盛り上がって、凄くドキドキしてしまう。
結んだ髪が流れて、無防備な項とか…
いつもは胸元しか見ないけど、背中も凄く逞しい。
抱きついた体越しに筋肉の躍動を感じる。
少し暑いのか、だんだん汗ばんでいく。
首筋から一筋、小さな粒が流れ落ちた。
思わずドキッとして、慌てて目を瞑った。


「97…98…99…100………ふー……」
「お、終わった…?」
「あぁ、次はスクワット…私の背におぶさって…」
「ん……よいしょっ……」
「…あぁ…良いな……やる気が高まる…」
「…?」

背中から思い切って飛び乗れば、お尻を支えられる。
その横顔は笑っていて、何やらご満悦のよう。
そのまま腰を下ろし、ゆっくりと戻る。
姿勢を保つためか、腕立てよりはペースがゆっくりだ。
息を吐きながらする姿。
どこまでも一生懸命で、そんな姿を間近に見れて…
カッコよくて、眺めるのも恥ずかしくて、つい顔を肩に押し当てる。
慎重ながらも順調に数を重ねて、気がつけば終わっていた。

「ミコ?もう降りていいぞ?」
「あ……あっ、ごめんね。」
「……やけに顔が赤いな…?」
「ちょ、ちょっとドキドキしてただけ…」
「……クスッ………可愛いな。私は押し当てられた胸の感触を堪能していたのに…」
「え…えっち……」
「フフフ…すまない。付き合ってくれてありがとう。」
「うん……鍛錬はまた明日から頑張って?今日はもう終わり。」
「……………すごく腹が減ったな……」
「え…あっ……確かにいつもより遅い時間だもんね…」
「腹が鳴ってしまいそうだ…朝食を頼めるか?私はシャワーを浴び……ミコは寝る前に浴びたか?」
「えーっと…それが昨日は、寝ちゃったタウを見て一緒にそのまま寝ちゃったから…」
「…一緒に入るか?」
「……、……………ッ………、…!」
「顔が真っ赤だぞ…!?クスクス…何を想像したんだ…?」
「な、何も想像してないもん!一緒に入るっ!」
「そうか、そうかっ。期待通りになるかは分からないぞ?」

凄く意地悪な顔をしている。
わ、私はただ…その鍛えられた体を直に見れちゃうなって思っただけで…
ニヤニヤと笑いながら、背中を押す手に従う。
二日酔いしてるくせにっ!
悪戯までしたら、もう口聞かないもんね!
9/9
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