絶えない噂
赤くなった顔を扇いで、羞恥心を落ち着かせる。
深呼吸してから、建物の影から出る。
庭園を通り抜け、敷地を隔てる門前へと向かうと皆が帰ってくる姿が見える。
よし…待ってたように見せかけなきゃ…

「…!ミコ!城で待つようにと…」
「で、でも心配で!今から向かおうと…」
「あぁ、それなら問題ない。レファンドスの心強い同士が、蹴散らしたんだ。」
「へぇ………どんな人?」
「そうだな…小柄な少女で、大きな弓を持っていて…名を魔法少女Nと言ったな。」


過去最高にお腹が空いて、ご飯を食べる手が止まらない。
これも魔法少女になる為の条件の一つ。
【力を行使するだけエネルギー消費を伴う】
つまり、自分の体を代価に力を使っているわけで…
悪を殲滅できるまで変身は解けないと言ったけど、それは半分嘘で。
自分の命が尽きるまでは、力を行使できる。
力自体が自分の生命力から生まれるもの。
つまり、エネルギー不足で使い続けると、過重な身体負荷で死に至るというもの…
どうしてこんなにも恐ろしい力を無断で…

「今日はよく食べるねぇ。」
「へ…あ、えっと……その…魔法少女さんに負けてられないなって。」
「鍛えないと食うだけでは太るだけだぞ。」
「もう、ローマン。女の子に太るとか禁句だよ?」
「体の基礎を作るにはまず食事から、とも言うからな。いや、しかし、君はライバル視しなくとも…」
「だって、強くなったらタイウィンさまのこと守ってあげれるから…」
「…、…私は君を守る為の騎士でもあるんだが…」
「心強いね〜!僕はもちろん応援するよ。騎士を守る姫、かっこいいね!」
「あんまり煽てないでください…」

シュネル様のおかげで随分と、食べることに対しての罪悪感が薄れた。
エネルギー摂取は食事だけではない、と分かっていても…
一番これが手っ取り早くて、簡単で、楽な 方法…
二回分の給食を食べて、ご馳走様。
もう少しだけある公務へとまた戻る。
城内ですっかりと人気者になってしまった魔法少女Nの話をせがむシュネル様。
本人の前でそのお話、やめてほしいなぁ…
なんて、口が裂けても言えない。
でも、人から聞く自分の姿は、まるで自分自身だとは思えなくて…
本当にそんなことをしたのだとは、信じ難い。
けど、ばっちり記憶に残ってるのだから、事実であるのは間違いない。
…また危険が迫ったら、今度は胸を張って守れる自信は生まれた。
とりあえずエネルギー摂取をどう補うか考えないと…
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