足並み
前にローマンにも、胸を張れと言われたな。
自分に自信を持て、か…
どれ程努力を重ねようとも、自分が一番強いとは思えないだろう。
どんなに強い相手に勝ったとしても。
ミコが試験を頑張っている間、私も努力を怠ってはいけない。
君が頑張っている間、私も努力を続ける。
剣筋が鋭くなった恩恵に、放てる剣気をもっと安定させていく。
剣を振るって交えるだけでは、駄目だ。
どんな相手にも、脅威であることを知らしめねば。
風切り音と共に土が舞い上がり、数秒後に木に切り傷ができる。
まだ、傷は浅い。
木を切り飛ばせずとも、もっと深い傷を刻める程にしなければ…
あと数ヶ月…たった数ヶ月しか残っていない。
これを手にすれば、最も強力な武器になる。
シュネル様、ローマン、ミコ…私も、必ず隣に立ってみせる。


「タウ!!タウー!!!」
「…ふぅ……どうした?」
「あのね!!これ!見て!!」
「合格通知書…ミコ様…合格!!」
「それでね!この試験も最得点だったらしいの!それで、さっき正式にシュネル様の付き人になれたの!」
「…!!つまり、シュネル様の秘書になれたということだな!夢が叶ったんだ!」
「うん!!私、頑張ったよ!!とっても嬉しい!!」

抱きついた体を落ち着かせるように撫でる。
あぁ、君もついに認められたんだな。
大会は絶対に負けられない。
はしゃぎ笑っていた声が、急に大人しくなる。

「ね、ねぇ…タウ……」
「どうした?」
「あのね…その……合格したら、してもらいたい事があって…」
「何だ?何でもやるぞ?」
「その………わ、私と……ちゅぅ……して、ほし…くて…」
「…!!!」

顔を真っ赤にさせて、蚊の鳴くような声でキスをして、と言った。
私達は恋仲になっていないよな…?
鼓動が激しく、うるさく鳴り響く。

「だめ……かな?…えへへ……恋人でもないのに…だめだよね…」
「君は……私のことが…好き?」
「うん…好き……大好き…」
「君は今日まで凄く頑張ってきたもんな。ご褒美をあげたって罰は当たらない…」
「…、…」
「私も君に伝えたい事がある…でも、今はまだ言えない…これは約束も込めて……剣術大会で勝つ姿を見ていてくれるか?」
「もちろん…っ…タウが絶対に勝つって信じてる。」
「試験合格おめでとう…それと────」

横髪を耳にかけて、赤く染まった頬を撫でる。
そしてゆっくりと目を伏せて、唇を重ねた。
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