見学会
城内の各部屋の掃除をしながら、巡回して内部構造を覚えてもらう手配だそうだ。
さっそく、いつも仕事場として使っている城内の部屋をまわりながら、ピカピカにしていく。
一ヶ月分とは言え、多くの人が歩く城内の床はくすんでしまっている。
意外と力仕事の多い給仕さんの仕事内容に感心してしまった。
部屋を巡りながら、用途を伝えたり、注意事項も伝える。
新人さんは一斉にメモに書き留めていく。
普段なら私も書き留める側なのだけど、逆の立場になるのは少し新鮮だ。
執務室について説明をしている間、新人さんの列の隙間から誰かの人影が見えた。
よく目を凝らしてみると、シュネル様が壁から覗いていた。
「こほん、少し良いですか?シュネル様、覗き見はダメですよっ。」
「あらら、バレちゃった。」
「シュネル様、おはようございます。新人研修の見学でございますか?」
「うん、調子はどうかな、と思ってね。ミコも頼もしい先輩だね。」
「そ、そうですか…?ありがとうございます…」
「後でスケジュール調整を頼んでも良いかな?急ぎではないけど、話だけ伝えておきたくて。」
「分かりました、ではまた後で。」
城内の部屋を一周して、午前の仕事は終わった。
食堂でご飯を食べながら、新人さん達と話をする。
さっそく私服姿であれ、シュネル様を見かけられた事にテンションが上がっているようだ。
そして、再び三人の話で盛り上がっていく。
「補佐様はタイウィン様と幼馴染でして、シュネル様とローマン様は従兄弟関係。そして4人は昔馴染み、でしたよね?」
「わぁっ、よく覚えてますね!?私とタイウィン様は元々、所謂下級民衆でして…」
「もっとお話を聞かせてください!」
興味津々で迫ってくる圧に負けて、昔話をしてあげることになった。
何度思い出しても、今の日々を過ごせる事がとても幸せだと感じられる。
昔話を一通りすれば、感動した様子で目が潤んでいた。
「ここで、ある意味では残念なお知らせかもしれない話をするわよ。」
「…?」
「補佐様はタイウィン様と恋仲だから、把握お願いするわね?」
「…!?ど、どうしてそれを伝えちゃうんですか?!」
「あら?上司の人間関係を把握する事も、給仕として大切な仕事ですよ?」
「そ、そうだとしても恥ずかしすぎる…」
「大変申し訳ないのですが…タイウィン様とローマン様の外見特徴を教えていただきたいです…」
「が、外見ですか!えっと、タイウィン様は銀色の長い髪を一つくくりにしてますっ。ローマンさまは黒髪でセンター分けですっ。」
「お二人とも一般兵とは違う装備をなさっているから、一目で分かると思うわ。」
「そうなのですね!?拝見してみたいなぁ…」
3/8
prev next△