被害1-1(タイウィン)
何をしてもついていない日と言うものがある。
そんなついていない事が、笑えるものであれば少々凹む程度に収まるのだが…

「はぁ………よし、行くぞッ!」
「たまにはこういう探索もいいですね!」

シュネル様の命により、王城付近に潜むアンノウンの殲滅へと向かわされた。
控えの隊員達でも太刀打ち出来そうなものだが、わざわざ私とミコを指揮官に抜擢された。
理由は、我々が行った方が早いだろうと言うものだが…
向かわされた隊員は10名程…ローマンが選りすぐった者ばかり。
よく見れば主君探しの旅に同行していた者もいて、顔見知りの多い部隊だった。
ここまで来ると薄々感ずいてしまう狙い。
私とミコだけに任せられる仕事はないが、二人で外へ出る機会を与えようとしたのだろう。
シュネル様には案外遊ばれているような気もするが、それで王座に君臨していただけるのなら安いものだ。

「シュネル様にはアンノウンさえ殲滅出来れば、少しの間自由に過ごして良いと言われましたよっ。」
「………」

嬉しそうに伝えてきたミコに思わず、頭を抱えてしまった。
それは遠回しに『デートでもしてこい』と言っているようなものじゃないか…!
後ろではその言葉を聞いて、煽てる声も聞こえる。

「あれ……規律を乱してしまいました…」
「問題ない、そこまで気を負うような任務でもないからな。」
「そうだね……えーっと、場所はー…あの森の中の洞窟だそうです。」
「森の中にもいるかもしれない、戦闘の準備を。」

隊員の動きを確認しながら、森へと進む。
草むらから怪しい気配を感じる……相手は三体程か。
ガサッ!!

「グォェェェッ!」
「追撃を!!」
「は…きゃっっ?!」
「うぉっ?!あいつ、どっから?!」
「あ!私のマントが!返しなさい!!」

的を絞った矢は見事に頭を撃ち抜き、ゴブリンは塵と化した。
前にいたゴブリンも後ろの隊達により、攻撃する間もなく迎撃されていた。
ヒラヒラと飛んでいくマントを追いかけて、地面に落ちたのを拾おうとする。

「ひゃぁぁっ?!」
「ミコ…!動くなッ!」
「は、はい!……ッッ!!」

地中に隠れていたのかよく分からないが、どうやらスライムが身を潜めていたらしい。
丁度その近くにマントが落ち、刺激したことによって襲われたと見る。

「うぅ…怖かった……助かりましたっ。」
「怪我はないか?」
「はいっ。」

マントを持って戻ってきた姿にドキッとする。
スライムの体液がかかったせいでブラウスが、透けてしまっている。
思わず歓声を上げている男共を一瞥し、自分のマントを外して羽織らせる。

「…?どうかしましたか?」
「…透けてる。」
「へっ?!…わ、ほ、本当だ…!!ごご、ごめんなさいっ!」

慌てて背を向け、隠せるよう器用にマントを体に巻き付けた。
鉄壁のガードに少し落ち込んだようにため息をつかれる。
少しは気を許せるとは言え、あんな姿を見せてしまったことに凄く嫌悪してしまう。
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