被害2-1(光タイウィン)
「貴様ら!足は引っ張るなよ?」
「ハッッ!!」

エルバレン様の下に就く前から優秀だった彼を支持する人は多い。
そして今の彼は指揮能力は抜群、取捨選択を合理的に行い、軍を幾度もまとめて成果をあげてきた。
それに比べて私はその足元で必死についていくことしかできない。
彼の足を引っ張るような事があれば、どんな処置を降されるか…分かったものじゃない。
今日の侵攻も頑張らなくちゃ…


って思ってたのに、張り切れば張り切るほど空回りしてしまうもので……

「ひゃぁっっ?!!」
「……っ?……手を煩わせやがって…!」

カモフラージュのために森の中をいくつかの隊に分かれて進んでいた。
人はたくさんいたはずなのに、魔物なりに弱い獲物を狙うらしい。
歩いているといきなり足を取られ、引きずっていかれた。

「チッ…シルバか……おい、大丈夫か。」
「は、はいっ…大丈夫で…わぷっ!」
「どうした?」

タイウィンさまの剣気のおかげで蔓からは解放された。
が、草の茂みに隠れていた仲間であろうマッシュに毒の胞子をかけられた。
体が痺れて動かない…!
蹲ったまま動かない私にタイウィンさまが近づく。
ごめんなさい、ごめんなさい…!
歩き近づく威圧に怖気付いたのか、カラカラと言いながらマッシュが逃げていく。

「……何だ、あれは…おい、立てるか。」
「すみ……ません…っ……毒を……」
「さっきのやつか……仕方ないな。」

体を動かそうとするが、筋肉も硬直してしまいどうにも動けない。
すると、体を持ち上げられる感覚に襲われた。
そっと瞼をあげると、タイウィンさまが心配そうに覗き込んでいた。

「……え………」
「治るまでの間だ、早く処置しろ。」
「は……はい……」

てっきり罵られたり、放置されたりするのだと思っていた。
実際…隊員の一人が何かアクシデントに遭えば、冷たい目で一瞥してその人を置いて先に進んだことを覚えている。
心配していれば、駒一つに気を使うなと怒られた。
だから、今…こうして抱えられていることがとても不思議だった。
いくら恋人と言えど、戦争の中では駒の一つにすぎない。
顎で隊員を先に進むように命じた。
少し気にしながらも隊員は様子見をする。
私だって少し困惑してる。
でも、早く解毒剤を飲まなきゃ…
うまく動かない指でバッグのチャックを掴もうと苦労する。
なかなかうまくいかないのを見かねてか、進むのをやめて膝をついた。

「……これか?」
「…!…ありがと…ございます…」

代わりにバッグを漁り、薬を取り出した。
信じられなくて、顔を見ると得意気そうにしていた。
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