被害2-2
「タイウィンさま…もう、大丈夫です。」
「ん…そうか、しっかりついてこいよ。」

人目を盗んで下ろす前におでこにキスをされた。
一気に緊張感から動揺によって心拍が上がり乱れる。
いつも仕事関係と私的関係をバッサリと切り離しているのに…
少し赤くなってしまった顔を冷やして、気を取り直す。
今回の目標である悪党の拠点前に着いた。
各自、待機場所へと向かう。
静かに突撃命令が出されるまで、私も待機する。
一人で外の空気を吸っている野盗に狙いを絞る。
射つ指令が出たのを見て、矢を放つ。
声を出すことも無く、パタリと倒れたのを見れば一斉に本拠地へ殴り込みに行く。
喉に矢が刺さって息絶えたのをあちら側が発見したが、もう遅い。
体制が整う前に隊員達は野盗に襲いかかる。
援護をするために茂みから出ようとした…

「ふぎゅっっ!…………ひっ!」

集中している間に背後からスライムが這い寄っていた。
動こうとした瞬間に腰元に噛みつかれて身動きが取れない。
飲み…込まれる!
ジタバタと暴れるが抜ける様子がない。
それどころか上半身をもっと飲み込んでいく。
気持ち悪い…!!
最初に体内へと入った腰元辺りの服が溶けていく。
あんな高濃度の毒に当たったら皮膚が焼け爛れてしまう!!

「た…助けて!!!」


(……ミコ、遅いな…)

全体の戦況を見るために入口を立ち塞ぐ。
躍起になって襲う者共を軽く切り払う……が、いつもその役はミコがやる。
撃たれて勢いの弱った者を切り捨てるのだ。
幸い、事前調査通りの人数と分かったところで未だ来ないミコを探しに行く。
待機場で何かあったか…?
先程も雑魚にちょっかいをかけられていたしな…

「ミコ!ミコー!」
「タイウィンさまっっ!!」
「ミコッッ!!……!?」

やはり待機場で襲われていた。
……このスライムは何がしたい…?

「動くな。」
「…!………ッッ…」
「……大丈夫か…肌が焼けたんじゃないか。」
「だい…じょうぶ……怖かった…!!」
「安心しろ…お前を見放すことはない。」

余程怖かったのか抱きついてきたのを安心させる。
服が溶けきった背中を確認するが……焼けていない。
それどころか、他の目的があったかのように際どい所の服が溶けかかっていた。
ミコの肌を味わってどうするつもりだったんだ?
それにもう少し早く寄れなかったことが悔やまれる。
涙を流しているのを拭ってやり、己のマントを羽織らせる。

「この件は俺たちがいなくとも片付きそうだ。ガサ入れしに行くぞ。」
「……うん……」
「…大丈夫だ……不安なら後で抱いてやろうか…」
「……っ!!」

耳元で囁けば顔を赤くさせ、慌てて首を振った。
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