順風満帆
剛腕に装着されたナックルを振り回しながら突進する巨男。
軽いモンスターはその圧で空中へと吹き飛ばされた。
そういう戦い方か…悪くない。
巨男の迫力に圧巻している魔術ペアに試しに指揮を取る。

「そこの魔術師!空中の標的に追撃を!」
「…?!な、なんだ!お前は一体!」
「勝ちたいのなら動くべきだ。ミコ、私は彼の動きを模範する。頼んだぞ。」
「はい!任せてください!」
「ま、待ってくれ、俺達は…」

遅れはこれ以上取っていられない。
さっそく前衛へと出て、剣圧でモンスターを空中へと巻き上げる。
それをすかさずミコの矢が捕らえる。

「魔術師さん!そちら側は頼みました!」
「…えぇ、分かりました。やるよ!」
「お、おう!」
「えーと…戦士さん?は、私達のカバーをお願いします!」
「わ、分かった。それなら俺にもできそうだ…」
「私は回復に専念しますね!」
「助かります!あの巨体さんを支えてあげて!」

やっぱりタウの指揮があると、場が引き締まる。
指揮を取る姿は迫力満点だし、明確で簡素。
どの試合もこうした目的がなかったから、お互い喧嘩しちゃったのかも。
全員が各々の役割を果たした結果、迅速に殲滅できた。
終わった後の余韻にほっと息をつく。
走り回って息を乱して少し汗ばんだ様子で、タウが戻ってきた。

「お疲れ様、途中で指揮を任せて悪かった。」
「ううん、タウにはタウの仕事が優先だもん。それにあれ位なら私にだってできるよ!」
「うん、とても助かった。」
「…おい、お前…」
「…貴殿か、なかなかの迫力だった。」
「先走りする俺に合わせたんだろ?他の奴らとは違うお前達と組めて良かったと思う。」
「…!そう言っていただけて嬉しいです!お互い、最後まで頑張りましょうね!」

意外にも共になったペアが私達に一言残していった。
どうやら彼らにとって私達は異質に感じたらしい。
それもそのはずだ…軍隊に所属しているのだから。
だが、そのおかげでこのブロックは勝ったも同然。
現段階で最速を記録し、あとは次のチームしか残っていない。
次の段階に上がれるのは2チームのみで、勝ち越しは決まっていた。
残りの1チームが終われば、一旦休憩が入る。
負けてしまったチームのカップルの大半は早々と帰ったようだ。
上機嫌に足を揺らしているミコの頭を撫でる。
そうすればニコニコと笑いながら、こちらを見上げた。
本来の目的を忘れてはいないだろうな…?
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