勝機への一筋
椅子に座って待ちぼうけして、ようやく第二ラウンドが始まった。
先程共に戦った巨男が私達をライバル視しているのが伝わる。
このブロックは4ペアだけが次の第二戦へと上がれる。
しかし、今度のモンスターは数ではなく、力で伏せるタイプ。
まず一般民では倒すことさえ難しいだろう。
魔術ペアも分が悪いように感じる。

「ひぇ……ドラゴンよりは引けを取るけど…かなり強そうだね…」
「そうだな………どう動こうか…」
「…………」
「……どんな敵にも弱点はあるはずだから…問題はそれが何なのかだな…」
「……あ!………うぅ、危なかった…軽い怪我だと良いんだけど…」

魔術があまり効いていなかったのか、ペアが吹き飛ばされていた。
地面に打ち付けられたまま動かない。
戦意消失で退場となった。
次のペアが終わるまでに見つけなければ…

「あのモンスターに刃って通るのかな…矢も弾かれそう…」
「弱気で挑んではいけないぞ。勝つ、これだけを考えるんだ。」
「うん…タウと一緒だもん…負けるわけがない…!」

一般民である前ペアは、怖気付いてしまってリタイアを申し出た。
その時のモンスターの動きは鎮座するのみだった。
これが何を意味するのか…
先程の魔術ペアはかなりの時間をかけて魔術を放っていたな…
その間もあれは動いていなかったような…
もしかしたら、時間経過がカギなのか…?
タイムアタックと言われて急ぎがちではあるが、制限時間は設けられていない。
静止している間は防御態勢なのかもしれない…動く為には全身を軟らかくする必要がある。
もしそうであるなら、あちらから攻撃を仕掛けられた時が勝機だろう。
リタイアしたペアとすれ違った後、私達の番を告げられ、戦場へと立つ。
やはり間近で見ると手強ささは際立つな…
対峙すればさっそく開始の音が鳴る。
矢を引き絞る構えを取ったまま、私の指示を待つミコに今の推理を伝えてみる。

「ミコ、さっきもだったが初めは動いていないように思う。」
「……確かに!」
「もしかすると、あれは防御態勢で今は動いても無意味なのかもしれない。」
「…なるほど……じゃあ一筋当ててみても良いですか?」
「あぁ、動いても私が守る。」

試し打ちされた矢は、乾いた音と共に弾かれた。
さらに敵もまだ動かない。
うん、間違ってはいないようだ。

「ふふ、タウの観察能力は凄いなぁ。」
「…生きるも死ぬも、ずっとその運命を背負っているからな。」
「……近衛隊長って荷が重いね…」
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