難敵
動かない我々に少し騒めいているが、敵から視線を外したりはしない。
すると指が微かに動いた。
その瞬間凄まじい勢いでこちらに向かってきた。
咄嗟にミコを抱えて避ける。
防壁に勢いよくぶつかり、破片がこぼれ落ちた。

「ぷぁっ…!ビックリした…!大丈夫?!」
「あぁ、受け身は取れたから…よし、いくぞ!」
「はい!」

荒い息を吐きながらこちらを睨む相手に剣を構える。
鋭い爪が振り下ろされるのを確実に弾き返す。
その間に隊形を取り直したのを確認すれば、爪を掻い潜って後ろへと回る。
隙だらけの首に彼女の矢が突き刺さった。
己の体重を支えきれずに巨体が地面へと倒れ込む。
その体の上を走り、頭へ追撃を入れた。
声もなく、確かに斬った感触だけが伝わる。
ぐらりと足元が揺れ動き、振り下ろされたかと焦ったが、どうやら筋肉硬直する前兆だけのようだ。
勝利を告げる音が鳴り響く。

「………勝ったのか…」
「タウ〜!タウ!倒せたね!!」
「あ、あぁ…こうもうまくいくとは思わなかった…」
「やっぱり戦ってるタウはとってもかっこよかったよ…怪我はしてない…?」
「大丈夫、よし戻ろうか。」

自分でも呆気にとられてしまったが、どうやら考えが的中したようだ。
待機場へと戻る際に次のペアとすれ違えば、栄誉を讃えられた。
そうか、私達が倒したことで攻略法も分かってしまったということか。
しかし…それだけではあれに勝てはしないとはっきり思う。
思った通りに初動は私達と同じく待機していた。
それまでは良かったが、動く気配を見切れなかった故に突進を避けることが出来なかった。
隣で思わず立ち上がったミコは、顔が真っ青になっている。
土煙が落ち着き姿が見えるようになったが、頭と腕の間で器用に攻撃を外していた。
傷つけないように配慮はされている、ということか…
その様子を確認できれば、敗北を告げられていた。
相手は自分が攻撃を避けられたと思っているようだが、滑稽でしかない。
その後の挑戦者もほぼ、同じような状況で戦線退場。
結局倒すことまでできたのは私達を含め3ペアのみだ。
そのうちの1ペアはあの巨男のペアではあるが…
だが、第二戦目の挑戦権を獲得できた。
ここで残りの2ペアを押しのければ、この大会の全貌を見ることも容易くなるはずだ。
しかし、この大会…思った以上に難易度が高いな…
あの記事ではそんな風に感じ取れなかったが…
それに…あの幻影といい、屋敷といい、あまりにも金がかかりすぎなのではないか?
この資金は一体どこから…?
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