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迎えた闘技本番。
ここで最後の一人になるまで戦えば、俺は晴れて英雄となる。
負けられない。
まずは平民ブロックから始まる。
貴族共め、待っていろ。
俺が必ず、王者になってやる。

ずっと一緒にいたから、あまり気になったことがなかった。
けど、闘技場に立つタウは他の人より異彩さが目立っていた。
あんな人といつも一緒に暮らしていたなんて…
幼馴染、村唯一の若者同士、そうでもなければきっと顔すら知られてなかったかも。
何だか急に遠い存在のように感じた。
あんなに格好良い人が、城下町から離れた田舎の村で暮らすなんて、きっと合っていない。
貴族のような暮らしをしている姿の方が、ずっと似合う…
私とタウは全然違う存在なんだ…

「余裕だったな。明日の準々決勝もこの調子で勝ちたいものだ。」
「お疲れ様、タウ。さすがだねっ。」
「あぁ、今日は分かりきっていた勝利だな。」

…何となくだが、ミコに元気がないように見える。
俺の気のせいだろうか…?
宿に戻ってから、そんな雰囲気が益々強くなる。
どうしてだ?
あんなにも生き生きと応援してくれていたじゃないか。

「ミコ、おいで。」
「…?」

足の間に座るよう、手招きされる。
少し恥ずかしいけれど、言う通りに座れば後ろから抱きしめられる。

「……何かあったのか?」
「へ…?…ううん、別に何も。どうして?」
「元気がないように見えたから。」
「…………」

ずっと一緒にいたら、こんな事まで分かっちゃう。
お互いの事なんて分かりすぎているから、何も隠し事なんてできない。

「どうしたんだ?…やっぱり寂しくなったか?」
「ううん、そうじゃないの……ただね…タウって、特別だったんだなって。」
「…?」
「ここに来て思ったの。タウがいるべき場所は、華やかな場所なんだって。」
「そんなことはない。」
「私とタウが同じ村で産まれたのは、奇跡的なこと。それから、ずっと仲良くしてたのも偶然の集まりだなって。」
「そんなわけないだろ?」
「きっと…タウの隣に立つのだって………」
「ミコ!」

どんどん涙が溢れていく。
嫌だな…主役に迷惑かけちゃうなんて。
でも、感じてしまった疎外感にどうしようもなく孤独を感じる。

「ミコ、泣くな。笑ってくれ。」
「…っ…ぅ……ぐすっ……」
「どうして急にそんなことを言うんだ…」
「ごめ…っね……ごめん…」
「謝るな……そんな思いをさせた俺が悪い…」
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